「北陸新幹線の延伸」なぜ難しい?“米原ルート”でも解決できない利害関係Photo:PIXTA

金沢~敦賀間延伸開業が1年後に迫った北陸新幹線だが、着工のめどが立っていない。環境影響評価(環境アセスメント)の遅れに加え、着工に必要な条件をクリアする見通しも立たず、まるで複雑なパズルを解くかのような厳しい状況に陥っている。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

着工のめどが立たない
北陸新幹線の延伸問題

 金沢~敦賀間延伸開業が1年後に迫った北陸新幹線だが、その先の展望が描けない。北陸新幹線は1997年に高崎~長野間、2015年に長野~金沢間が開業したが、いずれも開業以前に終点より先の工事に着手していた。

 だが残る敦賀~新大阪間はルート選定に手間取り、敦賀から小浜、京都、松井山手を経由して新大阪に至る「小浜京都・南回りルート」が決定したのは、結論から言えば2017年3月のこと。さらに環境影響評価(環境アセスメント)の遅れから着工のめどが立っていないのである。

 いわゆる「整備新幹線」とは、全国新幹線鉄道整備法に基づき1973年に整備計画が決定した5路線を指す。1989年の高崎~軽井沢間着工を皮切りに、これまで東北新幹線盛岡~新青森間、北海道新幹線新青森~新函館北斗間、北陸新幹線高崎~金沢間、九州新幹線博多~鹿児島中央間、西九州新幹線武雄温泉~長崎間が開業した。

 金沢~敦賀間が開業すると、2030年度末の開業に向けて工事中の北海道新幹線新函館北斗~札幌間を除けば、残る区間は新鳥栖~武雄温泉間、敦賀~新大阪間のみとなる。前者はフリーゲージトレインの開発断念を受けて計画の抜本的見直しに着手しており、次の着工区間が敦賀~新大阪間になるのは当然視されている。

 ところが整備新幹線の財源は2030年の札幌延伸開業まで使い切っているため、敦賀~新大阪間の着工はそれ以降にならざるを得ず、開業は2040年代中盤になる見通しだ。これでは遅すぎるとして、福井県や関西は早期着工と2030年代の開業を求めており、とにかく着工という既成事実を作ろうと躍起になっている。

 その駆け引きに使われたのが金沢~敦賀間の延伸開業だった。同区間は本来、今年春に開業予定だったが、石川県と福井県の県境に位置する全長5.5キロの加賀トンネルと敦賀駅工区で遅延が生じたことから、2020年12月に1年延期が決定した経緯がある。

 福井県や与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームはこれに反発したが、与党が敦賀~新大阪間の「2023年度当初着工」を決議し、当時の赤羽一嘉国土交通相が「決議の内容を重く受け止め、関係機関と調整して着工5条件の早期解決を図る」と表明したことで決着した。

 だが京都府内を縦断する大深度長大トンネルが国定公園に指定されている地域を通過する上、建設による地下水への影響や、トンネル掘削土の搬出と処理問題の懸念から一部地域が環境アセスを拒否する事態となっており、この「公約」の履行は極めて困難だ。