着工の目途が立たない中で
再浮上した米原ルート

 問題は総事業費と工期である。2016年の試算では小浜・京都ルートの概算建設費は約2.1兆円、工期15年だったが、2024年の試算では概算建設費3.4兆~3.7兆円、将来の物価上昇を見込んだ場合は4.8兆~5.3兆円になると判明。工期も25~26年を要することとなったのである。

 これは大問題だ。整備新幹線の着工条件のひとつに「費用便益比(B/C)」があり、便益が費用を下回らない、つまり、1を超えない事業は認められない。費用とはほぼ建設費なので、分母(費用)が増えればB/Cは悪化する。2016年試算のB/Cはギリギリの1.1だったが、建設費が倍以上になったことで0.5程度への低下が避けられなくなった。

 京都市の反対、膨れ上がる建設費などで着工の目途が立たない中、再浮上したのが米原ルートだった。建設距離が小浜・京都ルートの約140キロに対して約50キロと短いことから、2016年の試算では概算建設費約5900億円、B/C2.2、工期は10年とされていた。これなら建設費が倍になってもB/Cは1以上をキープし、工期も短い。早期完成には米原ルートの復活しかない、というのが推進派の主張だ。

 冒頭に記した通り、米原ルートを強く主張したのが日本維新の会だった。金沢~敦賀間の開業から2カ月後の2024年5月、斉藤鉄夫国交相(当時)に提出した「北陸新幹線大阪延伸ルートに関する提言書」は、「巨額の事業費や難工事、地下水脈への影響等の懸念が根強く、環境アセスメントは遅れ、開業はおろか円滑な整備事業遂行への展望は開けていない」と指摘。

 また「環境アセスのハードルを越えたとしても、そもそも収支採算性や投資効果など、着工の5条件を満たすのか極めて不透明である」として、日本海国土軸で東京と大阪を結ぶ大動脈を一日でも早く完成させるには「先が見通せない『小浜・京都ルート』は撤回し、ルート決定過程において費用便益比の優位性等の面で遡上にのぼった『米原ルート』に改めることが現実的かつ合理的」と主張した。

 維新を後押ししたのが2025年7月の参議院選挙だ。京都選挙区に出馬した維新の新人・新実彰平氏が、「莫大な費用負担や30年近い工期、地下水への影響なども不安視されている小浜京都ルートを見直し、費用も工期も大幅縮減が期待される米原ルートを再考」と訴えてトップ当選。同じ京都選挙区で、与党整備委員会委員長としてルート決定を主導した西田昌司氏を上回ったのである。

 8月には吉村洋文大阪府知事が、「事業費や費用対効果などの変化や、様々な意見が出ている状況から、国において、早期に、米原ルートも含め幅広く比較・検討し、関係者と合意形成を図ることにより、一日も早い認可・着工を実現する」よう求めた要望書を提出。維新の政権入りで見直しの声は無視できないものとなった。