地位の低い非正規社員ばかりが増える日本
労働システムの根本的な見直しが必要

 ひるがえって、日本においてフリーエージェントという働き方は定着していくでしょうか。最新の調査によると非正規社員の割合が38%を超え、男女とも過去最高を記録しました。一見、フリーエージェント人口は拡大しているように映ります。しかしながらフリーエージェントの一翼を担っている派遣労働者の現状は、労働条件ひとつとっても決して満足のいくものではなく、「正社員」に対して著しく不利な立場に置かれています。

すでにフリーエージェント社会を迎えている日本で、いかに生きるのか。巻末の玄田有史氏による解説も収録しています。

 安倍政権は、職種や勤務地、労働時間を限定したうえで企業と無期雇用契約を結ぶ「限定正社員」構想を掲げていますが、この政策によって非正規労働者の正社員化が進むのかどうか。「解雇しやすい正社員」が増えるだけではないか、という懸念は拭えません。

 正社員を大前提にした「正社員ありき」の政策ではなく、フリーエージェントたちを前提にした政策が求められているのではないでしょうか。正社員を前提にしてつくられている労働社会の仕組みやルールの見直しを進めるほうがよほど時代の要請に応えられると思うのですが、いかがでしょう。当のダニエル・ピンクはこう指摘しています。

 フリーエージェントは、私たちの仕事と生活に関する基本的な常識を塗り替えようとしている。大きな地殻変動が起きれば、地表の地形も様変わりする。既存のシステムが崩壊し、代わりに新しいシステムが生まれる。……フリーエージェントこそが、本当のニューエコノミーなのだ。(23ページ)


◇今回の書籍 25/100冊目
『フリーエージェント社会の到来』

「インターネットを使って自宅で一人で働き、独立していると同時に社会と繋がっているビジネスマン」、フリーエージェント。彼らが作り出す社会がやってくる――脱組織時代の文化と経済の展望。

ダニエル・ピンク 著
池村 千秋 訳
玄田 有史 解説

定価(税込)2,310円

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