2001年時点で全米労働人口の1/4、
フリーエージェントが増大する理由と背景

 フリーエージェント人口の内訳は、政府の統計や民間の調査、学術的な研究などをもとに推定すると、フリーランス1650万人、臨時社員350万人、ミニ起業家1300万人となっています。少なく見積もっても、アメリカには合計3300万人のフリーエージェントが存在している計算になります。本書が刊行された2001年の時点で、労働人口の4人に1人がフリーエージェントという働き方を選んでいたわけです。その後IT社会はさらに進展し、それに伴ってフリーエージェント人口も増大していることは間違いありません。

あるフリーエージェントの月曜日(141ページ)。カリフォルニア在住の女性フリーエージェントの一日が、事細かに記録されています。
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 フリーエージェントという働き方が登場した要因として、著者は「4つの変化」を指摘しています。

 第1に、従来の労使間の社会的契約、すなわち従業員が忠誠心と引き換えに会社から安定を保障してもらうという関係が崩壊した。第2に、生産手段(富を生み出すのに必要な道具)が小型で安価になって個人で所有できるようになり、操作も簡単になった。第3に、繁栄が社会の広い層に行き渡り、しかも長期間続いている結果、生活の糧を稼ぐことだけが仕事の目的ではなくなり、人々は仕事にやりがいを求めるようになった。第4に、組織の寿命が短くなり、人々は勤め先の組織より長く生きるようになった。

 つまるところ、ひとつの組織に一生涯勤め続けるなどということはますます考えにくくなっているわけです。では、フリーエージェントたちはどのように働き、どういう生活を送っているのか。何を考えているのか。そして、彼らにとって意味のある仕事とはどういうものなのでしょうか。

 フリーエージェントにとって重要なのは、安定より自由。自己表現が自己否定に取って代わった。人々は組織の陰に身を隠すのではなく、自分の仕事に責任をもつようになった。なにをもって成功と考えるかは、あらかじめ決められた定義に従うのではなく、自分自身で決める。フリーエージェントにとっては、「大きいことはいいこと」ではない。こうしてフリーエージェントは、プロテスタントの堅苦しい労働倫理を様変わりさせ、新しい労働倫理を生み出した。フリーエージェントの労働倫理を構成するのは、「自由」「自分らしさ」「責任」「自分なりの成功」の四つの要素である。(96ページ)