最近、安倍首相の消費税に関する発言が目立っている。経済指標を見ながら、慎重に判断しようという構えである。
ただし、見方によっては、参議院選挙を大勝した今になって、ことさらに慎重さを強調するのは、消費税増税を先送りしようと地ならしをしているのではないかと勘ぐることもできる。今秋に消費税増税を「決断しないかもしれない」と含みを持たせるメッセージを振りまいて、各方面からの反応を見ようとしているのだろうか。
風向きの変化は、参議院選挙に前後して起こった。7月13日に浜田宏一内閣府参与が、消費税増税は「消費税増税による日本経済へのショックはかなり大きい」と語り、7月19日には本田悦郎内閣府参与が「1%ずつ徐々に引き上げていくのが現実的」と呼応した。
最近では、7月27日に首相自身が、8月上旬に取りまとめられる予定の中期財政計画について「消費税率の引き上げを決め打ちするものではない」と釘を刺す発言をしている。同じタイミングで、増税が与える経済への影響について、首相自身が複数案を検証するように指示したという観測が広がった。
折りしも日経平均株価は、7月26、29日と大きく下落し、不穏な空気が流れる(図表1参照)。アジア株の中で日本株の下落が目立つのは嫌な感じである。この期に及んで、首相が消費税率引き上げの先送りを決定するのならば、それは円高と株安を誘発する危ない判断に見える。