日銀・植田総裁Photo:SANKEI

中立金利の意義低下、財政不安・円安で
中立水準を上回る利上げの可能性

 衆議院選挙の投開票が2月8日に迫った。選挙後、日本経済はどういう展開となるのか。

 トランプ関税の影響が一段落する一方で、春闘で高水準の賃上げが継続すると予想されており、2026年は、昨年を超える経済成長を見込む向きが多い。一方で、高市政権の積極財政を巡る期待や警戒感から長期金利は上昇しており、円安基調が続く。予想外の展開が生じるリスクに警戒を怠れない。

 衆院選後の日本経済や政策の動向に大きく影響するのは、(1)政府の財政運営、(2)為替の反応、(3)景気・物価、(4)日銀の政策姿勢―の4点だろう。これらは選挙結果や選挙後の政治の枠組みによっても変わってくる。

 まず、選挙結果については、(1)自民党が衆議院で単独過半数の議席を得る「自民党大勝ケース」、(2)自民党が単独過半数には届かない「自民党辛勝ケース」、(3)自民党が議席を減らす「自民党敗北ケース」―の三つを設定できる。

 自民党が単独で過半数を獲得する「大勝」の場合、財政運営は、高市首相が掲げる「責任ある積極財政」のうち、「責任ある」がより重視されるケースと、短期の志向に基づく「積極財政」が押し出される展開が予想される。

 前者の場合は 財政へのモヤモヤ感が解消され、物価なども落ち着いた動きになりそうだが、後者の場合は、インフレ加速の一方で長期金利の上昇が景気の下押し圧力になる。

 とりわけ景気や物価、金融政策の鍵を握るのは、為替相場の反応だろう。

 日本銀行は、直近の1月展望レポート(経済・物価情勢の見通し)で、「(為替の変動が)予想物価上昇率の変化を通じて、基調的な物価上昇率に影響する可能性がある」とした。この記述は今回の展望レポートで新たに加わった。

 基調的なインフレ率は、日銀が従来、政策判断の軸と位置付けてきたが、これと円安がひもづくとすれば、今後の日銀の利上げでは、(1)円安への配慮が強まる、(2)利上げの指針としての中立金利の意義が下がる―という二つの重要な変化が生じる。日銀の金利正常化のペースは加速する可能性が高い。