「君の英語は全然わからないよ」
厳しい教授が言い放ったキツイ一言

 筆者が米国大学院に留学した、最初の授業でのことだ。そのコースは大学院1年生が必ず取らなくてはならない「コアコース」だった。その担当の先生はたまたま、学部で最も学生に厳しいと言われる教授だった。

 その先生の専門分野は私の志向していたものとは違っていたため、彼の講義についての予備知識はあまり持ち合わせていなかった。しかし、(米国の大学院ではどこでもそうだが)教授はそんなことはお構いなしに、膨大な量の専門書のリーディングを課し、徹底的なディスカッションと頻繁なレポート提出を要求する。

 できなければ、その学生には非常に厳しくあたるということでも、その教授は有名だった。昔、その教授の授業をとったある学生が、精神的に追い込まれて、カウンセリングまで受けたという話だった。

 当時米国に来たばかりで、友人もいず、英語も慣れていなかった私は、初回の授業で、その教授が話していることの半分も理解できなかった。専門書のリーディングも、当時の私のリーディングスピードでは追いつくことはできなかった。今の理解度を上げることができなければ、この授業の単位は取れないだろうと直感的に思った。

「わからないところは質問しておこう」

 私は、授業に臨む前からそう決めていた。米国の授業では、学生からの質問には先生は丁寧に答えるし、学生もまた積極的に質問する。そういう文化に自分も早く慣れるためにも、怖がらずに質問するべきだ。そう考えていた。

 そのときに何を質問したのか、今では覚えていない。だた、その後の教授の返答だけは強烈に印象に残っている。

「I don’t understand your English.」

 一言、冷たく突き放すように言われ、その後は沈黙しているままだった。