ずいぶん昔、第三のビールの麦芽比率は25%未満でした。当初、麦芽以外の原料で作る第三のビールもありましたが、人気が出たのは麦芽比率がビールよりも低い発泡酒に麦由来の蒸留酒を足したタイプの第三のビールでした。

 その後、税制が変わり、第三のビールは麦芽比率50%未満となりました。金麦、本麒麟、クリアアサヒはビールらしい味を追求してきたため、リニューアルで原料構成はビールに近いものになっていきました。

 そして10月からは50%未満だった麦芽比率を50%以上に変更して副原料を多少見直すだけでビールの定義を満たせます。つまり今回のリニューアルでは税金増が一番大きなコスト増要因で、原材料の変更についてはそこまで大きなコスト増要因ではないのです。

 とはいえ、一缶あたり7.26円の税金のコスト増でも価格を維持するのは大変です。そこで価格を下げるために行う重要な戦略判断が「ブランドを変えない」ということです。

 ビール類で新しいブランドを立ち上げて認知させるには、数百億円規模の莫大な広告投資が必要です。しかし金麦、本麒麟、クリアアサヒの名称をそのまま使えば初期広告費は抑えられます。そのうえで「ビールになりました」というシンプルなメッセージに絞った販促ができますから、新商品としてのコスパはよくなるのです。

視点2
何を達成しようとしているのか?

 では金麦、本麒麟、クリアアサヒについて、この秋のリニューアルで何が達成できれば事業戦略として成功だといえるのでしょうか?

 重要なことは販売数量です。最低限でも現在の数量を維持、可能な限り数量シェアを上げることが各社の狙いです。

 もともと新ジャンル、つまり第三のビールは日本経済が低迷して家計が苦しくなる中で、ビールと比べて圧倒的に価格が安かったことで庶民に支持され広がったジャンルです。2020年にはビール類の販売数量に占める第三のビールの割合は46%に達していました。