「休日でもあの人のことが頭から離れず、どっと疲れてしまう」――その原因は、ネガティブな感情が脳のエネルギーを奪っていることにあるのかもしれない。米国在住の精神科医・久賀谷亮氏の著書『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』には、他者への感情を鎮める「メッタ(慈悲の瞑想)」の3ステップも書かれている。その一部をご紹介しよう。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

【精神科医が解説】人間関係のストレスが消えていく習慣・ベスト1Photo: Adobe Stock

考えるだけでイライラ

 職場の人間関係で、どうしても好きになれない上司や同僚がいる。
 その人のことを考えるだけでイライラし、休日でも頭から離れず、どっと疲れてしまう……
 そんな悩みを抱えている人もいるだろう。
 ストレスの大半は人間関係から生まれると言われるが、こうした他者へのネガティブな感情は、私たちの脳を激しく疲弊させている。イライラによって疲弊した脳を回復させるには、どうすればいいのだろうか?

ネガティブな感情が脳のエネルギーを奪う

『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』の中で、人間関係のストレスを解消する方法として紹介されているのが、「慈悲の瞑想(メッタ)」だ。

 誰かに対する怒りや嫌悪感で頭がいっぱいになっているとき、脳内では「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という回路が過剰に働き、莫大なエネルギーを浪費している。このDMNの主要部位である後帯状皮質の活動を鎮めるのが、他者の幸せを願う「メッタ」という手法である。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)などでもプログラムとして導入されており、脳科学的な裏付けも進んでいるれっきとした脳の休息法だ。メッタは、妬み、怒り、絶望のようなネガティブな感情を打ち消し、不眠やストレスを改善するのだという。

ポジティブな感情を育てる「メッタ」の3ステップ

 では、具体的にどのように実践するのだろうか。本書で紹介されているメッタのステップは以下の通りだ。

①通常のマインドフルネス呼吸法を10分続ける
②自分が慈しみたい人を心にイメージし、それによって起こる身体の感覚や感情の変化に注意を向ける
③その人に向けて次のようなフレーズを心の中で唱える・あなたがさまざまな危険から安全でありますように・あなたが幸せで心安らかでありますように・あなたが健康でありますように――『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』p.142-143

「マインドフルネス呼吸法」とは、椅子に座って目を閉じ、意識を呼吸に向けるというものだ。まずは自分の呼吸に注意を向けて心を落ち着かせた後、自分が慈しみたい人、あるいは「ストレスの原因になっている嫌いな人」を思い浮かべる。最初は抵抗があるかもしれないが、その人の安全や健康を心の中で静かに願うのだ。本書の物語の中で、主人公のナツは仲良くなれない職場のメンバーのことを思い浮かべる。顔を思い浮かべるとネガティブな感情が沸き上がって止まらなくなってしまうという相手だ。メッタに抵抗感を感じたナツだったが、「これ以上ネガティブな感情に支配されるのはごめんだ」と考えて、とにかくやってみることで変化していった。

 メッタを続けると、脳内では「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンの分泌が促進されることもわかっている。オキシトシンは人との絆を深め、マンネリ化したパートナーシップの改善や、人間関係のストレス軽減に大きな効果をもたらす。思い浮かべるとイライラしてしまう人がいて心が休まらないときは、静かに目を閉じて、この「メッタ」を実践してみてはいかがだろうか。