【現場に冷笑される組織の共通点4】
データを読み解く人材とリソースがない

 4つ目は、数値を集計する担当者はいても、原因を分析し、施策に結びつける人がいないことです。

 エンゲージメントが低いという結果だけでは、適切な施策は決められません。エンゲージメントとは、社員が仕事に対して持つ熱意や活力を指します。それが低い場合、原因究明のため、もう一段階の分析が必要です。仕事の内容が悪いのか、業務量が逼迫しているのか、上司との関係が悪いのか、配置や組織風土の問題なのか、あるいは本人のパーソナリティによるものなのか。原因を特定し、それが一過性のものか、恒常的なものかも見極めなければなりません。

 上司との関係が悪いのであれば、配置を変えるか、上司と面談を重ねて関わり方を訓練していく。仕事そのものが逼迫しているなら、業務の割り当てを変える。ここまで踏み込んで初めて施策になります。
 
 ですから人事担当者には、最低限、エンゲージメントや従業員満足度、組織コンディションは何から成り立ち、それがパフォーマンスや定着率にどう影響し、どういう介入方法があるのかを学んでほしいのです。これを知らないままでは、せっかくのデータも宝の持ち腐れになります。

【現場に冷笑される組織の共通点5】
導入後の運用設計が甘い

  5つ目は、導入すること自体が目的になり、その後の分析、改善、現場へのフィードバックまで設計されていないことです。

 ここには構造的な問題もあります。エンゲージメントサーベイのサービスが成長したのは、一度企業に導入してもらえれば、労せず継続的にお金が入るビジネスだからです。一人あたり月500円として、1000人の会社なら年間600万円になります。その後の施策で料金が発生するわけではないので、運営企業としては、サーベイを取ること自体に意味がある、と売り込むことになります。

 定例ミーティングなどで、運営企業から施策提案はあっても、個別の事情を分析したわけではなく、出た結果をもとに、類似する企業と同じ施策を勧めているだけということもあるようです。外部サービスにも一定の支援を期待することはできますが、自社固有の課題に対する施策の設計と実行は、社内で担う必要があります。そして機動的に動くには、相当なリソースが必要です。導入後に必要となる人員や時間を確保しないまま進めれば、データや制度だけが増えていくことになります。

 サーベイを始めるなら、事前に(1)何を把握したいのか、(2)誰が分析するのか、(3)どのように原因を特定するのか、(4)どの部署が施策を実行するのか、(5)結果をいつ社員へ返すのかを決め、運用の全体像を設計しておく必要があります。

 そして、結果が悪ければ、暫定的でもかまわないので、この問題に対してまずはこの施策を行う、というスタンスを示すことが重要です。結果は悪かったと報告されただけでは、社員は「で、どうするの?」と思うばかりです。

 人的資本経営とは、人を数値に置き換えることではありません。データや制度を使って、人と組織をより良くしていく経営のことです。運用できない施策を増やすより、確実に改善まで手が回る範囲に絞る。それが現場の信頼を取り戻す第一歩になります。

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