時価総額100億円未満が400社…
〈名ばかり東証グロース〉の実態
米国の株式市場における方針をざっくり言うなら、「全ての情報は開示する、後の判断は市場に任せる」です。米国の証券ルールでは、企業の良し悪しを当局が判定するのではなく、投資家が判断できるだけの情報を開示させることに徹します。背景には、市場への信頼があります。
だから、一風変わった議決権の仕組みも支配の集中も、上場時の開示書類に正直に書かれている限り、認められます。投資家がその構造を嫌えば株価は下がり、会社が資金を集める条件は悪くなります。
SpaceXは上場初日に売り出し価格を約19%上回りました。つまりSpaceXとマスク氏の特異な構造を承知の上で、それでも高い値を付けたのです。良し悪しを決めるのは、当局ではなく市場です。
一方、日本の制度は、その前提が逆です。東京証券取引所の審査は、情報の開示だけでなく、社内のチェック体制や役割の分け方、株主の権利の守られ方まで、中身に踏み込んで判定します。
SpaceXのようにマスク氏ひとりが経営と技術と設計の責任者を兼ね、現場に深く入り込む体制では、まず上場は難しいでしょう。1株に多くの票を持たせることは、日本でも数例ありますが異例中の異例です。
翻って日本の制度は、本当に投資家や企業のためになっているのでしょうか? 新興企業向けの東証グロース市場には600社強が上場していて、時価総額100億円未満の企業が400社ほど占めます。現状、グロースとは名ばかりで、上場後に大きく伸びる会社は多くありません。
むしろ「上場がゴールになっている会社ばかり」という指摘もあるほどです。上場そのものが目的になっていて、その先の成長が描けない。これには東証も危機感を持っているようで、2030年からは上場5年で時価総額100億円という維持基準を課し、伸び悩む会社に退場を迫る方針です。
しかし、会社を大きくしたい。いつかは上場したい――。そう願って走ってきた経営者ほど、上場の準備に入ったとたん、奇妙な感覚に襲われます。攻めたいのに、攻められない。伸びたいのに、ブレーキを踏まされる。私はこれには、理由があると思います。







