ナスダックをはじめとする米国市場の証券審査では、労働時間の長さを理由に上場が拒絶されるような実質的な適格性審査は存在しません。これは米国の証券規制が、当局が企業の是非を判断する「実質審査主義」ではなく、投資判断に必要な情報をすべて市場に示す「開示主義(Disclosure Principle)」だからです。
また、米国では公正労働基準法(FLSA)等の労働法規制が存在するものの、ホワイトカラー層を中心に「時間ではなく成果で評価される」文化が根強く、業務達成のために集中して働くスタイルが一般的です。雇用契約において職務内容と報酬の対価が明確に合意されている限り、一律の労働時間制限によって企業の成長や上場が阻害されることはない、という合理的な考え方が前提にあります。
日本のように、労働時間を整えることが上場の前提になる、という発想そのものがないのです。日本の作法は、勝負どころでアクセルを踏みたい会社にとって、ときに足かせになります。
なぜPayPayは日本ではなく
米国ナスダックに上場したのか
他方で、日本の上場基準の厳しさというよりも、米国市場のスピード感と評価の高さを選んで米国で上場する例もあります。直近では、PayPayの米国ナスダック上場がその例です。
ソフトバンクグループ傘下のPayPayは、国内QRコード決済の取り扱いで6割超のシェアを占めます。3月12日に上場し、日本企業として過去最大規模となる約2兆円の時価総額を付けました。
先述した、当局があれこれ吟味するというよりも投資家の判断を信じてスピード感を持って上場させる米国スタイルが、PayPay上場を引き寄せたといえるでしょう。
上場すれば、3カ月ごとに経営状況を開示する義務と引き換えに、まとまった資金を得られます。米国の型破りな3社が上場したのは、事業で巨額の資金を必要とするからです。
PayPayはすでに強固な基盤を持ちながら、さらなる評価を求めて米国で上場しました。上場を目的とするのではなく、事業の中身や成長ビジョンに応じて、上場をひとつの手段として選んでいます。
自分の会社(英会話コーチングスクール)は、上場を目指すべきか――。正直なところ、すぐに答えは出ません。








