一方、中国勢は、誰でも利用できる「オープンソース」かつ「低価格化」のビジネスモデルを徹底している。例えば中国のディープシークは無料で利用できる。開発者向けには従量課金制を導入している。ディープシークの料金設定は、アンソロピックの約20分の1といわれている。

 アリババグループの通義千問(Qwen)も、基本的に無料で利用できる。ムーンショットAIは、有料プラン(日本円で3000円程度)も提供しているが、無料で最新の推論モデル「Kimi K3」を使うこともできる。

 しかも、オープンソースであるため、エンドユーザーはAIをパソコンや自社サーバーにダウンロードし、インターネット接続なし、あるいは外部にデータを送信しない環境で動かすことができる。使い方に合わせた微調整(ファイン・チューニング)も可能だ。

 そのため、低コストで個人、企業、政府などの公的機関、研究機関はAIを導入できる。そうしたシステムは、経済や安全保障などの制度の効率的運用に役立ちそうだ。

中国は「蒸留」を重ねて
米国の規制に対抗

 米国のAI開発企業は、今のところ、新しいAIを開発して顧客を囲い込む戦略を取っている。対して、中国企業がオープンソースのAI開発を重視する背景には、いくつかの要因がある。

 ひとつは、米国の半導体輸出規制への対抗だ。米国は、エヌビディアの画像処理半導体(GPU)などが中国に伝わらないよう規制を強化した。その対抗策として中国政府とAI開発企業は、「蒸留」と呼ばれる先端モデルの模倣を重ね、オープンソース化を選んだ。

 中国のAI企業は、先端の推論サービスは提供する。それをオープンにする。必要な調整は、利用者レベルで行う。そうすることで、実際の演算などにかかる負担を減らすことができる。

 こうしたオープンソース型ビジネスモデルの有効性を世界に知らしめたのが、昨年1月のディープシーク・ショックであり、続く7月のムーンショットAI・ショックだ。

 すでに、米国スタートアップの約8割が、中国製のオープンソースモデルで自社製品を開発しているといわれている。中国製AIの利用企業は、自前のGPUやサーバーでモデルを改良・応用する。その成果(バグ修正や新しい利用方法など)を、中国のAIコミュニティーに還元する。結果として、中国AI開発業界の底上げにつながる。