直近の円安を進めた「三つの要因」
「骨太」原案、「有事のドル買い」、ウォーシュFRB

 最近の円安には、「骨太方針」の原案の記述による利上げへの不透明感のほかにも、中東情勢の緊迫化、ホルムズ海峡の封鎖がさらに長期化する懸念が強まったことが要因となった。

 国際的な緊張が高まると、世界で広く決済や資産運用に使われるドルが、安全な資産として買われやすくなる。いわゆる「有事のドル買い」だ。

 原油や天然ガスの多くを輸入に頼る日本では、中東情勢の悪化によって原油価格が上昇すれば、輸入代金が増える。原油の決済は主としてドルで行われるため、日本企業は円を売ってドルを調達しなければならない。この結果、ドル買い・円売りが増える。

 原油高は、日本の物価を押し上げるだけでなく、円安を通じてさらに輸入物価を上げるという悪循環を生む可能性がある。

 かつては、例えばリーマンショックや欧州債務危機などの国際的な危機が起きると、円が安全資産として買われる場合が多かった。しかし中東危機の場合には、日本がエネルギー輸入国であることから、円よりドルが選ばれる傾向が強まっている。

 またアメリカの金融政策が市場の予想よりもタカ派的になったとの見方が広がったことも円安の要因になった。

 FRBのウォーシュ議長は、7月14日の議会証言で、インフレ抑制を重視する姿勢を示した。

 FRBは6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で政策金利を3.5~3.75%に据え置いている。利下げ圧力をずっとかけてきたトランプ政権が示した新議長でもあり、市場でも6月FOMC前には早期の利下げを期待する動きもあった。

 しかし、インフレの再燃や高止まりへの懸念が強まれば、FRBは政策金利を高い水準に長く維持することになる。

 一方、日本の金利はアメリカよりも低い。このため、高い金利を得られるドル建て資産に資金が向かい、円が売られやすくなる。

2022年ごろから進んできた円安
国際経済の変化や日米金融政策などを反映

 以上の要因は、最近の円安を説明する上で重要だ。

 しかし、円安はここ数カ月だけに生じた一時的な現象ではないことに注意しなければならない。円相場は、2022年ごろから、途中で円高に戻る局面を挟みながらも、傾向的に、かつ大幅に下落してきた。

 したがって、現在の円安を理解するには、最近の政治や市場の動きだけでなく、この数年の主要中銀の金融政策や国際経済の変化を振り返る必要がある。

 コロナ禍が深刻化した20年3月、FRBは政策金利をほぼゼロまで引き下げ、大規模な金融緩和を実施した。金融市場の不安が強まるなかで、安全資産と見なされた円が買われたこともあり、円相場は一時1ドル=101円台まで上昇した。

 しかしその後、アメリカでコロナ禍からの回復の過程でのサプライチェーンの混乱やロシアのウクライナ侵攻を機にした資源や穀物価格上昇によるインフレが急速に進むと、FRBは22年3月から大幅な利上げに転じた。これに対して日銀は大規模な金融緩和を続けたため、日米金利差が急速に拡大した。

 高い金利を得られるドル資産に資金を移す動きが強まり、22年10月には1ドル=151円台後半まで円安が進んだ。