和泉「(1)と(2)はさきほど話題になったことですね。(3)はどういうことでしょうか?」
黒澤「バイアスとは、一般的に偏り、先入観、偏見、といった意味で使われます。心的傾向という表現もあります」
上田「どうしても先入観ってありますよね……」
黒澤「ええ。もちろん私にも。具体的には、リスクを重視したり、最悪のシナリオを想定して行動したりする傾向など。たとえば降水確率が10%でも、必ず折りたたみ傘を持ち歩きますが、これこそまさに心的傾向によるものでしょう」
上田「10%ですか!?俺なら絶対に持って行かないなぁ(笑)」
和泉「“日本人は真面目すぎる”とか“中国人はマナーが悪い”といった根拠のない説も立派な先入観、偏見ですね」
黒澤「厄介なのは本人がそのことに無自覚だということです。ですから“自分には◯◯な考え方を持ってしまう傾向がある”と、しっかり認識する必要があります」
和泉「なるほど~」
自分の好みの答えに
快感を覚えてしまう
黒澤は話を続け、何か答えを出す際にはむしろバイアスがあることを前提にして、バイアスを排除したとしても同じ答えでいいかという問いのほうが自然だという感覚でいることを説明します。ヒカリは話を聞きながら、黒澤らしい、とても冷静で慎重な考え方だと感じていました。
上田「(4)の“実は自分にとって『好ましい答え』がないか?”とはどういうことですか?」
黒澤「人には必ず好き嫌いというものがあります。好きな食べ物があるように、好きな人のタイプがあるように。ですから、問題に対して答えを出すときも、自分にとって好ましい答えというものがきっとあるはずだという考え方です」
上田「完全に同意っす」
黒澤「たとえば、人間関係にコスパ・タイパは必要かという問題。おそらくお2人はすでに、自分としての好ましい答えが頭の中に浮かんでいるはずです。和泉さんはいかがですか?」
突然の質問に戸惑いつつ、ヒカリは自分の“好みの答え”を言語化します。
和泉「私の場合、苦手な人が参加する飲み会には行きたくないなって思ってしまうし、友だちが待ち合わせに遅刻するとイライラしちゃうので、人間関係に“コスパ・タイパは必要だ”という答えのほうが好ましく感じてしまいます」
『「ロジカル×ラテラル×クリティカル」で最適解が見つかる 問題解決の地図』(深沢真太郎、日本実業出版社)
上田「俺は逆かなぁ。これまでの人生において人間関係でたくさんいい思いをしたり、人と人がじっくり長く関わることでチームワークが学べたり、自己成長できたという感覚があるんだよね。だから、人間関係には“コスパ・タイパなんていらない”という答えが好ましく感じるかも」
黒澤「人間はその好ましい答えを出すことで心的な快感を得ます。人間は不快感ではなく快感を求めて生きています。だから無意識レベルで、自分にとって好ましい答えが出るように論理を組み立てるのです」
上田「人は物事を見たいように見る、思いたいように思う、みたいな感じですね」
ヒカリにも身に覚えがありました。仕事やプライベートにおいて、自分がなんとなく思っていたことと同じ考えを誰かが述べてくれると、「だよね」や「ホントそれ」といった言葉で賛同し、ついその内容が正しいと思い込んでしまいます。黒澤が言う“快感”という表現は実に的を射ていると感じました。







