コロナ禍の情報に振り回されない「クリティカルマインド」を思考の整理家が伝授Photo:PIXTA

何が正しい情報か分からないまま、情報に一喜一憂し不安を覚えてしまうコロナ禍。情報を見極め活用する力がこれまで以上に必要性を増しています。しかし、仕事で大切な情報活用の方法は会社でも学ぶ機会が意外と少ないもの。そこで、「思考の整理術」を活用した、情報を見極める上で大切なポイントを基本から解説します。(コンサルタント 鈴木進介)

報じられる感染者数を
どう受け止めればよいのか?

 筆者は、感染症や医療政策の専門家ではないため、「この情報が正しい」と新型コロナ関連の各種情報を正確に判別することは容易ではありません。しかしながら、報道や公的に公開されている情報を確認する際に、「ここだけは気をつけたい」点について「情報活用力」の面から論じたいと思います。

 連日、新型コロナの新規感染者数がニュースで流れてきます。報じられる内容では、いかに感染者数が増減したかという「単純な数字」だけが強調されていますが、新規感染者数だけを見て、本当に実態がつかめるのでしょうか?

 感染者数が増えたと聞けば不安を覚え、感染者数が減ったと聞けば安心する。その数字に一喜一憂しているだけでは報道の情報に振り回され、ストレスになるだけでしょう。実態が分からない状態でストレスを抱えても、この先、安心して生活を送ることが難しくなってきます。

 例えば、「新規感染者数が増えた」と聞くと確かに危機意識は持つべきですが、それがどの程度、深刻な状況なのか内訳を探っていく必要があります。各地域の人口はどの程度で、検査を実施した数に対して感染者が何人いたのか、そのうち重症化した人数はどの程度なのかなど、「量」だけではなく、「質」を見なければ実態が見えてこないものです。

 私たちは、単純化された情報を見ると、自分の頭で考えることもなくうのみにしてしまいがちですが、事の本質を見誤るので注意が必要です。与えられた情報は本当に正しいのか、実態を反映しているのか、その内訳はどうなっているかなど、細かくひもとき、時には仮説を立てながら自分なりに見極めをしていく必要があります。

 情報をうのみにせず、いったん「本当にそうだろうか?」「本質はどこにあるのだろうか?」と、情報を吟味して独自の答えを見いだそうとする姿勢を「クリティカルマインド」や「クリティカルシンキング」と呼びます。

 クリティカルマインドとは、よく「批判的思考」と直訳で語られることがあります。しかしながら、誰かを批判することが主旨ではなく、与えられた情報を自分の頭で考えたり、精査したりする姿勢こそが本来の主旨と解釈するのが適当です。

 コロナ関連の情報に限らず、日常の仕事の中でも、「この情報は正しいのだろうか?」「情報源はどこからのものなのか?」「内訳はどうなっているのだろうか?」など、いったん情報を冷静に見極める姿勢が求められます。