情報が公開されないため
保険料の格差が見えない

 この保険料負担の格差を抜本的に調整して均すことについて、厚労省はおそらく前向きではないようだ、とも高久教授は正直な実感を述べる。

「後ろ向きのまま放置されている理由は、保険料負担の格差があまり国民に伝わっていないから、ということが非常に大きいと思います。受ける医療サービスは保険によって変わることがなく皆同じなのに、なぜこんなに保険料率が違うのか、ということを誰も厚労省に説明を求めないので、厚労省もこのままでいいのだろうと思っている。だけど、誰も厚労省に説明を求めない理由の根源は、情報が公開されていないからです。

 世論がもう少し盛り上がるための土壌が必要だし、これは国民の『知る権利』に該当する情報だとも思うので、行政的権限で各健保組合に開示を義務づけるくらいのことはしてもいいのではないでしょうか。

 国保については、保険料算定の計算方法も複雑で、あまりにも細かい地域単位で保険料率が大きく異なるために、自分の負担が他の人と比較してどれくらい重いのか誰も判断できない、という点も大きいでしょう」

 ここで、高額療養費制度と大きく関わる事項のひとつとして、付加給付に注目してみたい。

 付加給付とは、大企業の保険者が多い健保組合や公務員用の共済組合などの健康保険が用意している制度で、医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に独自規定に基づいて金銭の支給が行われる。そのため、これらの保険の加入者は、高額療養費制度の収入区分で異なる上限額と関わりなく、自己負担金額は月額2万5000円程度になることが多い。

加入する健康保険の種類で
自己負担額が大きく異なる

 一方で、中小企業で構成される協会けんぽや、自営業者や75歳未満の年金生活者が加入する国民健康保険には、付加給付という制度がない。つまり、加入する健康保険の違いによって、高額療養費の実質的な自己負担額には大きな違いが生じていることになる。

 各健康保険の加入者数は厚労省資料(2022年度データ[注3])によると、付加給付のある健保組合と共済組合がそれぞれ2830万人と921万人、付加給付のない協会けんぽと国保は3994万人と2493万人、という構成になっている。

[注3]
「高額療養費制度について(参考資料)」厚労省、2025年12月25日、19ページ
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621877.pdf