つまり、付加給付を受けることができない国民(6487万人)は、給付を受けることができる国民(3751万人)の約1.7倍であることがわかる。「高額療養費制度と社会保障を考える議員連盟」初代事務局長・中島克仁氏のインタビューの中で、健康保険の種類によって付加給付の有無がある状態が〈見直し〉案の遠因になった、と指摘している。その際の中島氏の発言を引用しておく。
「今回(政府の〈見直し〉案で)直撃されたのは、国民健康保険と協会けんぽですよね。一方で、健保組合や共済組合は独自の付加給付制度があるので、今回の議論とはちょっと(影響を受ける度合いが)違う。たとえば国保の現役世代で、がんや難病を抱えて子育てをしている方々は、年金も基礎年金だけで、社会の中でより将来に不安を抱えている方々が多い。その人々を直撃したということです」
「たとえば厚生労働省の職員の皆さんは、家族も含めて公務員共済で付加給付がありますから、自己負担は2万円から高くても5万円くらい。国保や協会けんぽの方が一気に7万円近く負担金額が上がるとしても、『ふーん、大変だなぁ』くらいの認識しかなかったのではないでしょうか」(カッコ内は筆者補足)
公務員共済の付加給付は
「税の不平等」との指摘
齋藤裕弁護士(編集部注/新潟県弁護士会所属。労災などの労働事件や交通事故、離婚、医療過誤などの事件に取り組む)も、健康保険の種類で付加給付の有無が存在する現在の状態は不合理だと指摘する。
「大企業の場合(健保組合)は、わかるんですよ。自分たちで稼いで、優秀な従業員を招くために健康保険をいいものにしなければならないのですから。自分たちの稼ぎでやっている限り、文句を言われる筋合いはない。
しかし、公務員の場合は税金で賄っているわけです。もちろん、彼らの給与から負担する保険料が原資になっているのですが、さらにその元はというと、税金です。税金をやりくりして高額療養費の自己負担が軽くなるような優遇制度を自分たちには用意しておいて、健康保険の格差を作っている状態は非常に不合理な差別だし不平等な税金の出し方なので、憲法上も平等権の侵害として問題になりうると思います」
『高額療養費制度』(西村 章、集英社)
このように、付加給付の有無、つまり加入する健康保険の種類によって事実上の高額療養費負担金額に大きな違いが発生しているにもかかわらず、この状態が平等権を侵害する問題として意識されていないのは、皆が自分の加入保険以外のことをあまり理解しておらず、そもそも他人の健康保険のことを理解する必要がない、という社会的な構造があるためだろう。
したがって、この不公正な状態を解消するためには健康保険をひとつに合体した方がよい、と齋藤弁護士は提案する。平等性、という観点による齋藤弁護士の主張は以下のとおりだ。
「大企業が自分たちの企業努力で運営している健保組合をくっつけろとまでは言いませんが、少なくとも国保と公務員共済、協会けんぽくらいは合体させた方がいいのではないでしょうか。そもそもこれからは人口が減っていくのだから、合体させることによるスケールメリットや合理性があるだろうし、そうすることで、『公務員だけが得をしていて有利じゃないか』という国民の不平等感も解消できるわけですから。そのような健康保険の合併を進めていかなければ、(憲法14条が保障している)根本的な平等性は実現できないと思います」







