「ただの目」になりきる

モネは次のように言いました。

「もし私が盲目で生まれ、ふと眼が見えるようになったとしたら! 眼に見えるものがなんであるかを知ることもなく描き始められるだろう」(原文ママ)

モネは「ルーアン大聖堂はグレーだ」という思い込みを捨てようとしました。そして、まるで初めて目を開いたかのような新鮮なまなざしで、その瞬間の光のなかに見える「本当の色」を捉えようとしたのです。
彼は、自分の目が受け止めた色を、瞬時にキャンバスへと写し取っていきました。

その結果として描き出された風景は、人々がふだん認識しているのとはまったく異なる色をしていました。機械のように「目」に徹した結果、奇しくも、モネだけにしか描けない唯一無二の作品がそこに立ち現れたのです。

これこそが《ルーアン大聖堂》が「赤っぽい色」で描かれた理由です。

ポール・セザンヌが「モネは目にすぎない」と評した言葉には続きがありました。

「モネは目にすぎない……しかし、なんとすばらしき目なのか!」