高性能な住宅での
夏型結露が目立つワケ

 さらに見過ごせない事実がある。夏型結露は、主に断熱性能や気密性能の高い住宅で報告されている。「性能が高いほど安心」という一般的なイメージとは、必ずしも一致しない。もちろん、断熱・気密性能の向上自体は歓迎すべき変化である。省エネルギーや住み心地の観点からも、その意義は揺らがない。問題なのは、湿気に関する設計と工事の品質が、その性能向上に追いついていないことにある。

 振り返れば、住宅の内部結露は断熱材が普及し始めた1970年代以降、まず「冬型」が大きな課題となった。室内の湿気が壁の中に入り込み、冷えた屋外側で結露する現象である。この冬型に対しては、防湿シートを用いる対策が長い年月をかけて標準化されてきた。

 一方で新たな課題として浮上してきたのが「夏型」結露の存在だ。住宅の高気密化と冷房利用の普及が進むにつれ、屋外の湿気と冷えた室内との間で、壁の中に結露が生じやすい環境が生まれていったためだ。冬型への備えには十分なノウハウの蓄積がある一方で、夏型への対応はまだその途上にあるとも言えるだろう。

設計・工事・入居後の3段階で防ぐ
適切な仕様選定と住まい手の湿度管理

 夏型結露への備えは、その多くが住み始める前の段階にある。これから住宅を建てる方、あるいは大規模な改修を予定している方は、以下のポイントを意識しておきたい。

(1)【設計段階】夏型結露を想定した建材が検討されているか
設計担当者やハウスメーカーの担当者に、夏型結露への対策が講じられているかを確認しておこう。例えば、壁内の湿度に応じて湿気を逃がす「可変透湿気密シート」などの選択肢がある。こうした仕様が配慮されているかを事前に確認しておくことも、将来的なリスク軽減につながる。ただし、シートの選定だけで解決する問題ではない。通気層が機能していること、外装の防水が健全であることが前提となる点は押さえておきたい。

(2)【工事段階】雨に濡れた木材が十分に乾燥しているか
工事中の大雨で床や柱が濡れること自体は珍しくないが、十分に乾かないまま壁を閉じてしまうと、引き渡し時点で壁内が高湿度になってしまう。工程写真の共有を依頼したり、第三者の点検を活用したりして、乾燥が十分かどうかを確認できるようにしておきたい。壁を閉じたあとで手を入れるとなれば、大がかりな工事になる。建築資材や施工費の上昇が続く昨今、設計・工事の段階で確認しておく意味はいっそう大きい。

(3)【入居後】冷房の運用で壁内の温度差をやわらげる
もちろん、すでに建てられた住宅にお住まいのケースでも工夫の余地はある。熱中症の予防を最優先としたうえで、設定温度を下げすぎない、エアコンの風を外壁面に直接当てないといった心がけは、壁の中に生じる温度差をやわらげることにつながる。気になる兆候があるようなら、早めに専門家に相談することをおすすめしたい。

 夏場の湿気対策における鍵は、対策を講じることができる“タイミング”の差にある。入居後でも住み手の工夫で対処できる室内カビに対し、壁の内部で生じる夏型結露は、設計や工事の段階で勝負が決まる。壁を閉じたあとでは選択肢が限られるからこそ、事前の対策と計画が欠かせない。

 住宅性能の向上と近年の気候変動により、住まいを取り巻く環境は一変した。壁の中で静かに進行する夏型結露は、住宅の進化に合わせて、私たちの湿気に対する意識もアップデートすべき時期が来ていることを示しているのではないだろうか。

(株式会社さくら事務所創業者・不動産コンサルタント 長嶋 修)

さくら事務所公式サイト
https://www.sakurajimusyo.com/