「大企業ほど影響が大きい」わけではない
もともとの株価水準が高い銘柄ほど押し上げ
2025年末から今年6月末で比べた日経平均株価とTOPIX、東証プライム市場時価総額の実際の数字を見ると、下表の通りだ。
このように、日経平均の上昇率は、プライム市場全体の時価総額増加率を大幅に上回っている。
こうした差が生じる大きな理由は、日経平均が225社の時価総額を均等に反映した指数ではなく、一部の値がさ株に大きく左右される指数だからだ。
日経平均は、基本的には225銘柄の調整後株価を合計し、それを除数で割る株価平均型指数だ。このため、企業規模や発行済み株式数よりも、株価換算係数によって調整された1株当たり株価が高い企業ほど、指数への影響が大きくなる。
したがって、トヨタ自動車やNTTのように時価総額が非常に大きくても、調整後の1株当たり株価が相対的に低い企業は、日本を代表する巨大企業でありながら、日経平均を動かす力は比較的小さい。
単純化して説明すると、株価換算係数が同じ場合、株価が5万円の銘柄が10%上昇すれば調整後株価は5000円上昇する。一方、株価が3000円の銘柄が10%上昇しても、上昇額は300円にとどまる。
実際の日経平均への寄与額は、これらの上昇額をさらに除数で割って求める。しかし、株価換算係数が同じなら、前者が日経平均に与える影響は後者よりはるかに大きい。
したがって、同じ10%の株価上昇であっても、もともとの株価水準が高い銘柄ほど、日経平均を大きく押し上げるのだ。
日本企業全体の動きとは一致せず
AI・半導体など一部の高株価銘柄が急騰
近年の日経平均株価ではファーストリテイリングやアドバンテスト、東京エレクトロン、ソフトバンクグループなど、少数の値がさ株の比重が非常に大きくなっている。
このため、AI・半導体関連の一部の値がさ株が急騰すると、プライム市場の多くの企業の株価がそれほど上昇していなくても、また、トヨタ自動車やNTTなど時価総額の大きい企業が低迷していても、日経平均は非常に大きく上昇するという現象が起こる。
このため、日経平均の上昇と、多くの個別銘柄を保有している投資家の実感との間に、大きな乖離が生じる。
最近の株式市場の状況は「日本企業全体が一様に成長し、株価が上昇した」というより、「AI・半導体関連株を中心とする限られた高株価銘柄が急騰し、それが日経平均を大幅に押し上げた」と理解するほうが、実態に近い。
(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)








