根曲がり竹とブナ
出没を左右する餌

 最近、私が特に気になって仕方ないのが毎年5月~6月のタケノコ狩り、とりわけ根曲がり竹を求めて山中に分け入る人たちです。根曲がり竹は美味で、換金性が高く、とても人気があります。

 しかし、クマにとっても根曲がり竹は大好物なのです。それも根曲がり竹は見通しの悪い藪の中に生えていて、人間とクマが探すのに夢中になっているうちに鉢合わせして、人身被害に至るケースが後を絶ちません。根曲がり竹を採りに行くのなら、クマと遭遇しないよう常に周囲に注意を払う必要があります。

 クマの出没状況は、ブナ堅果類の豊凶とリンクしてきました。2023年と25年は秋田県を含めた東北5県すべてが大凶作で、秋の食べ物が少なかったことが、秋のクマの大量出没の一つの要因になったと考えられます。そのブナは一種類の樹木と思われがちですが、実はさまざまな種類に分かれています。

 クマにとって秋の重要な食べ物になるのが、同じブナ科である脂質や炭水化物に富んだブナ属とコナラ属の堅果です。ブナ属は脂質の含有量が高く、コナラ属のように動物が嫌う物質であるタンニンを含んでいません。

 そして、堅果の結実を同調させて豊凶を使い分けることで、堅果を狙う動物の数をコントロールしています。また、広範囲かつ長期間で結実活動をコントロールするため、結実の周期が長くなり、不作の期間が数年に及びます。

 一方のコナラ属の堅果ですが、ブナ属ほどの地域間の同調性を持たず、結実周期もブナ属より短い点で違いがあります。また、コナラ属のミズナラは比較的広く分布し、不作の年であっても局所的には結実しているケースが見られます。このためクマにとって、ブナ属の堅果はときどきありつける「ハレの食べ物」で、ミズナラは「いつも口にしている主食の米のような食べ物」と表現する研究者もいます。

 7月7日に東北森林管理局が、管轄する東北5県のブナ類を対象にした145カ所における開花・結実調査の結果を発表しました。それによると、秋田、岩手、宮城、山形の4県の開花状況から見た今年秋の豊凶の予測は「豊作」で、青森県のみが「並作」でした。

 5県ともに「大凶作」だった前年から状況は一転する見通しになっています。この調査からはミズナラの開花状況は分かりませんが、大好物のブナ類が順当に実を結んでいけば、秋口以降のクマの里への出没は落ち着きを見せるのではないかと考えています。