JRから経営分離される
並行在来線の区間とは

 上記の事例からも分かるように、鉄道運営のノウハウを持たない自治体が3セク会社を経営するのは簡単なことではない。しかも、JRが儲からないからと手放した路線だ。現在では北陸を中心に地域密着経営を実現した事業者も存在するが、彼らも望んで3セク会社を設立したわけではない。

 新幹線を誘致するには経営分離を受け入れるしかない、並行在来線を存続させるなら地元が引き受けるしかない、路線と同時に赤字も引き受けるしかない、というのが実情だった。それだけ負担が大きいだけに、「並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意」が着工条件に含まれている。

 では肝心の「具体的なJRからの経営分離区間」は、どのように定義されるのか。国交省は「並行在来線とは、整備新幹線区間を並行する形で運行する在来線鉄道のことです」としか説明しておらず、政府・与党の合意文書を見ても明文化されたものはない。

 だが、運輸省は1996年5月の自民・社民・さきがけ連立与党整備新幹線検討委員会にて「並行在来線は新幹線開業により特急列車が新幹線に移る線をいう」との見解を示しており、筆者が以前、国交省に問い合わせた時も同様の説明を受けている。

 これは考えてみれば当たり前の話だ。新幹線が開業すると、それまで都市間輸送を担っていた在来線特急が廃止され、収益の柱を失う。例えば、JR北海道の函館本線函館~長万部間は函館と札幌を結ぶ特急「北斗」が走る幹線だ。2025年度の1キロあたりの1日平均旅客輸送人員(輸送密度)4823人、これは札幌都市圏を除けば、特急「ライラック」など多数の特急が走る函館本線岩見沢~旭川間に次いで多い。

 北海道新幹線が札幌まで延伸すれば、最速3時間半の「北斗」は、1時間程度の新幹線に置き換えられる。函館本線の沿線自治体で構成する「北海道新幹線並行在来線対策協議会」の試算によれば、新函館北斗~長万部は同200人以下まで低下する。これはJR北海道が2016年以降廃止した5路線と同水準の利用者数だ。在来線特急が新幹線に移行するインパクトが分かっていただけただろうか。