沖縄が自立的に発展する
起爆剤となり得るのか
以上から、筆者は沖縄南北鉄道の建設を前向きに検討する価値はあると考える。ただし、課題は多い。その最たるものが建設費高騰の今、採算性をどう確保するかだ。
沖縄鉄軌道は、JRの在来線や大手私鉄と同じ普通鉄道、あるいはリニモ(愛知県名古屋市~豊田市)と同じHSST、ゆりかもめ(東京・新橋~豊洲)と同じAGTなどいくつかの形式で検討されている。しかし、内閣府の調査報告書(24年)では、どの案を採用しても費用便益比(B/C)※が基準の1を下回っている。※公共事業などで便益:Benefitを金額に換算し、かかる費用:Costで割って算出する指標
普通鉄道で建設するパターンのB/Cは0.49であり、40年間で約1兆円もの累積赤字が見込まれる状況だ。最善のHSSTでさえB/Cは0.83であり、採算ラインに届かない。本島中央部には山が広がっているためトンネル区間が多い。浦添市や那覇市などの市街地は建物が多い。人件費や資材コストも高騰していることから、政府が慎重姿勢を示す背景も理解できる。
突破口があるとすれば、「今ある需要」だけを示しても厳しいので、新たな需要をつくる姿勢を示すことだ。かつて私鉄各社は自社の住宅開発を行うために鉄道路線を敷いた。小林一三が阪急で、五島慶太が東急で進めた鉄道ビジネスの基本モデルを再現することが、沖縄の鉄道開発でも求められるのではないか。
ただし、沖縄ならではの特殊事情もある。鉄軌道計画の沿線候補地には、将来的に返還予定の米軍基地の再開発と併せて検討する場所が多い。それゆえ、これは単なる鉄道建設ではなく、沖縄が自立的に発展する、「強い沖縄経済」を実現する重大な要素にもなり得るはずだ。







