「こわい」という噂は聞いていた。原作の評判からしてもっぱら「ちいかわはかわいいが闇がある」というもので、読む人はそのギャップを楽しみ、味わっている。映画を見た子どもが最初は「こわい」とつぶやいていたものの、次第に無口になっていたという投稿も見かけた。
事前の情報を統合すると、キャラクターたちの愛らしさに目を奪われているうちに、いつの間にか不穏なところへ連れて行かれるのだろう、と思っていた。要するに、それなりに事前の覚悟をして見に行ったのである。
開始早々から
垣間見える“闇”
しかし予想に反して冒頭から不穏だった。
ちいかわ(主人公)とその友達であるハチワレ、うさぎは、空から降ってきた「特別な島への招待」チラシを見つけ、その内容に惹かれる。そこには「カンタンな討伐で100倍の報酬、限定島ラーメンや限定スイーツも」と書かれていた。
原作未読であるため、ちいかわが普段から「討伐」で生計を立てているのかはわからなかった。しかし「100倍の報酬」が彼らにとって魅力的であることはわかる。ちいかわたちはすぐにその気になる。
彼らの師匠にあたるラッコ(パンフレットによれば、「討伐ランキング1位」の猛者)は「怪しい」と一瞬で看破するも、大の甘党であるために「限定スイーツ」の文字に抗えない。
甘い言葉の裏には罠がある――。このチラシの誘いに乗っていけないことは見るからに明らかである。100倍の報酬なんて少し考えてみればあり得ないことがわかる。
ちいかわは優しく純真だし、寸暇を惜しんで「草むしり検定」の勉強に励む真面目さもある。しかし、怪しいチラシ一枚に乗ってしまうその行動は、闇バイトやオンライン詐欺に騙されてしまう人そのものである。
もちろん、ここで「なんだか怪しいからやーめよ」となっていたら物語が進まないのであるが、その始まりが純粋な好奇心というより、あからさまな欲望に起因するところが、アニメであまり見ない展開であるように感じた。初っ端から人の業(ごう)と危うさが見える仕掛けである。







