世界最高峰の高級ブランドといえば、多くの人がルイ・ヴィトンなどの名を挙げるだろう。彼らがトップに君臨し続ける理由は、一切の妥協を許さない完璧な品質管理にある。実はワインの世界にも、そんなハイブランドと全く同じ哲学で造られ、世界中のセレブをひれ伏させる伝説的ワインが存在する。水上彩の著書『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』のエッセンスから、自然という予測不能な条件のもとで生み出されるワインの裏側を紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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世界をひれ伏させる「黄金の甘口ワイン」
フランスのボルドー地方と聞けば、多くの人が重厚な赤ワインを思い浮かべるはずだ。
しかしこの土地には、赤ワインとは全く異なるアプローチで世界最高峰に君臨するワインがある。
ソーテルヌ地区には、冷たいシロン川と温かいガロンヌ川が流れ、その温度差が秋の朝に深い霧を生みます。霧による湿気がぶどうに宿る菌を目覚めさせ、昼間の太陽が水分を飛ばすことで、干しぶどうのように糖分が凝縮された貴腐ぶどうが生まれるのです。
――『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より
特殊な気象条件が重なることで初めて生まれる「貴腐」は、まさに自然がもたらす奇跡の産物だ。
完璧でなければ「1年間の努力」を捨てる
だが、この奇跡は常に起こるわけではない。
自然に依存する製法だからこそ、少しでも天候が崩れればすべてが台無しになってしまうリスクを抱えている。
同シャトーの総支配人は、「基準に満たない年は、そもそも造らない」と語ります。
実際、ディケムでは過去に何度も、生産をすべて放棄した年があります。「ルイ・ヴィトンのバッグと同じで、完璧でなければ製品化しない。それがラグジュアリーだ」と。
――『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より
利益のために妥協して中途半端なものを売るくらいなら、いっそ生産をゼロにする。
このすさまじい覚悟こそが、絶対的なブランド価値を保ち続けている理由なのだ。
グラス1杯に込められた命がけのギャンブル
こうした過酷な条件と厳格な基準をクリアしてようやく瓶詰めされるワインは、途方もない希少価値を持つ。
黄金の輝きは、戦略的なボルドー人が、自然という予測不能な神様とプレイした、命がけのギャンブルの戦利品なのです。
――『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より
たった1杯を満たすために、途方もない時間とリスクがかけられている。
世界最高峰と呼ばれるワインの裏には、自然の脅威に立ち向かい、美学を貫き通す人々の狂気にも似た情熱が隠されているのだ。
ワインジャーナリスト/コラムニスト
1986年生まれ、神奈川県鎌倉市育ち。お茶の水女子大学理学部卒業後、大手通信企業を経てワイン業界へ。世界最大のワイン教育機関WSETが認定する、国内でも取得者の少ない最難関資格「Level 4 Diploma」を保持。
『Forbes JAPAN』オフィシャルコラムニストとして、ワインをビジネスや文化の視点から紐解く一方、国内外の産地を精力的に訪問し、ストーリーを丁寧に紡ぐ執筆活動を展開。スーパーで手に入るデイリーワインからハレの日の1本まで等しく愛し、初心者目線の解説に定評がある。また、茶道や着物を日常に取り入れたライフスタイルを実践し、ワインと日本の美意識を交差させた独自の楽しみ方を発信している。趣味はアルゼンチンタンゴ。








