
新聞連載開始の日のはずが……
りんたちの仕事は、一生、誰かの手を借りないといけないような患者さんたちに、心地よい手を差し出し続けることなのだ。
男爵家はきっと大口取引相手。こういう契約がいくつかとれたら、無料看護も助かる。
そんなとき、しのぶが妊娠4カ月だとわかる。やりたいことをやってきた印象のしのぶだが、これからの看護婦会のことを考えてぎりぎりまで黙って働いていたらしい。
「さすがに子どもができたら働くわけにはいかないし」と悩むしのぶに、直美が久しぶりに英語で言う。
What are you talking about, Shinobu?
「妊娠も迷惑などと看護婦が口にするのは断じて許しません。バーンズ先生ならきっとそう言うんじゃない?」と祝福する。
シマケンの連載、しのぶの懐妊、おめでたいことが続いている。だが、ハッピーなムードは長く続かない。
シマケンが自室に戻ると、義姉が訪ねてきた。
夫で、シマケンの兄の万太郎が新しい事業の投資に失敗し、借金をつくっていなくなったというのだ。不穏な音楽が流れる。
いや、でも小説がヒットしたら、兄の借金も返せる?いま、シマケンはついているはず。でも、この不穏な音楽は……。
そしてシマケンの小説が載る日、りんが楽しみに新聞を見ると、知らない人の小説が載っていた。
シマケンの名前はどこにもない。
シマケンもその頃、新聞社の綿貫(小松和重)に事情を聞きにきていた。どこまでシマケン、ついていないのか。
広告主の親族の作家に差し替わってしまったと言われて愕然。そんなの、載ってから説明されるのは、酷い。
「運がなかったってことですか? 僕はどうすればいいですか?書評を書けば小説を書かせてもらえるなら書きます。記者が近道なら記者でも何でもやります」
いつになく、真剣なシマケンに、綿貫は「どうした?」
どうした?じゃないだろ、綿貫さん。ここからあとは、文章を書くことを生業としている者には、痛すぎる話になる。







