円が売り戻された背景に
高市首相の「円安ポジティブ」か

 振り返ると7月23日、1ドル=163円99銭まで円は売られていた。約40年ぶりの水準まで円は対ドルで下落していた。

 その状況下、7月末の協調介入には、米国の意向も大きく影響したようだ。米財務長官のベッセント氏は、円安で日本のインフレが進行して金利が急上昇し、それが米国の金利の急騰につながる展開を警戒している。わが国の財政規律が緩み、財政破綻リスクが高まり、保有する米国債を大量に売却せざるを得なくなることを警戒しているのだろう。

 介入で一時的に円は反発したが、その効果は思ったほど続かなかった。8月12日には1ドル=159円台まで再び円は売られた。

 円が売り戻された背景には、高市首相が円安をポジティブに考えている節があるだろう。円安重視の高市首相は、これまで日本銀行の金融政策の正常化に反対の考えを示してきた。

 高市首相が円安を重視している以上、投資家にとって「円は売り」となる。7月末から8月初旬、協調介入で円が反発した瞬間は、円で資金を調達して、ドルなど金利の高い通貨を買うキャリートレードの好機だった。

 また、高市首相は財源を明確にせず、積極型の財政政策を推進している。8月5日の臨時閣議では、2027年4月から2年間に限り、食料品の消費税率を現在の8%から1%に引き下げる基本方針を決定した。党内や野党の慎重論がある中、高市首相は公約に固執して減税を押し通したとの指摘もある。

 明確な財源を確保せず税率を引き下げると、わが国の財政規律は一段と緩むことになる。食料品の消費税率の引き下げ以外にも、高市首相は財源を確保しないまま危機管理投資を表明し、景気刺激策も実行している。

 減税や景気刺激策などの財源は、国債の発行増加で賄うことになる公算が大きい。物価上昇や財政悪化、さらには財政破綻リスクの高まりを反映して金利上昇への圧力は高まった(悪い金利上昇)。

 どの国でも政策を信用できない限り、当該国の通貨の保有を続けることはできないものだ。こうして協調介入後、程なくして円は再び売られた。