壁は黄色やオレンジ
徹底的に働きやすさを追求
本田 人事のノウハウは古くなっているんじゃないですか?
猪子 財務担当はいません。資本金ゼロで始めて、今も外部資本はゼロです。銀行からの借り入れもありません。成長するためにはお金が必要ですが、それはキャッシュフロー内でやっています。どうして借り入れしないか、ですか?借り入れするための計画を立てたりするのが、面倒だからです。
本田 組織の作り方が、今までとまるで違いますね。
猪子 日本の会社の一般的なオフィスは、どうしてああいうデザインになっているのかに興味があるんです。人は環境によって、大きくテンションが変わります。例えば、美術館に行くと、何となくしゃべらなくなる。自分の興味があるものがちりばめられたお洒落なカフェには、わざわざ遠くからでも行く。空間というのは、ものすごく大事なんです。では、日本のあのオフィスで、本当にテンションを上げて仕事ができるんでしょうか。
本田 たしかに、環境は人を変えます。見晴らしのいい山に登れば気持ち良くなる。シャワーを浴びたらさっぱりする。環境によってテンションが変わるのであれば、テンションが上がるところを仕事場にしたほうがいい。そのほうが、いい仕事ができる可能性が高い。もっともな話だ。
猪子 僕たちはこだわってオフィスを作っています。どうして他社もそうしないのか、不思議でなりません。そうしたほうが絶対に生産性は上がるし、クリエイティビティも上がる。実は僕は個人にはまったく興味がないんです。集団としての生産性、集団としてのクリエイティビティに関心がある。どういうオフィス環境だったら、それが上がるのかに、ものすごく興味があるんです。
本田 実際、こちらには、オフィスのデザインをしたり設計をしている部署があり、この部署がすべてオフィスの内装デザインを手がけているそうですね。自社の経験を生かして、外部にオフィスデザインを提供するサービスも行っているとか。
猪子 壁は黄色、オレンジなど暖色系の色があちこちに使われています。徹底的に働きやすさだったり、発想を豊かにするという視点で、オフィスを研究して、既製のものを使うのではなく、いかに自分たちで考えて、いい環境を作っていくのか、ということを大切に考えています。
本田 初めてチームラボのオフィスを訪れた人は、まずその斬新さに驚かれますね。
猪子 趣味の話ではなくて、合理的な話なんです。黄色の壁にしているのは、黄色やオレンジなどの暖色のほうが、話しやすくなるから。気軽な雰囲気が作れるんです。だから、わざと壁を黄色にしている。真っ白やブルーだと、話しにくくなります。会議スペースも暖色ベースですし、社員が働く壁は赤やオレンジで色をわざと多くしています。これは刺激を多く与えて活性化するためです。
本田 たしかに、社員が席に座ると、多くの色は目に入らない。ところが席から立つと、色が一気に目に入る。つまり、席に座っていると落ち着いて仕事ができて、立ち上がって移動するときに、刺激を受けられるようにしてあるんだ。