フロアに
壁なんていらない
本田 こちらの大きな特徴のひとつに、フロアには壁がほとんどありませんよね。
猪子 子どもは自分の部屋を作らないほうがいい、って知っていますか。そのほうが、成績が上がるんです。リビングで勉強させたほうがいい。個室みたいな概念って、実はまったく合理性がないんです。つまり、壁は作るべきではないということ。残念ながら技術的な問題で、音が入るとスカイプが使えないので、一部の会議室だけは壁があるんですが。これは早くなんとかしてほしいんです(笑)
本田 私たちが取材をしているすぐ横で、採用の面接が行われたのには、びっくりしました(笑)
猪子 会議室なんて、壁がある理由がわからないです。そんなものはいらない。情報は、どんどん漏れたほうがいいんです。互いに漏れ合っているほうが、面白くなる。例えば、プロジェクトチームがミーティングをしている。参加者はいろんな漏れた音に刺激を受けながらアイディアを出せる。逆にミーティングの中で出てきた言葉に引っかかって、通りかかった誰かが意見を出すかもしれない。そのほうが面白い。実際、こうやって本田さんに取材を受けていますけど、僕が本田さんにじっと集中しているのかというと、人間そんなことはない(笑)。いろんなことを考えている。それが、他のプロジェクトにも役に立てるかもしれないわけです。
実際、取材の最中にオフィスデザインを担当するメンバーが通りかかって、取材に加わる場面がありました。まさにこれこそ、壁がなかったがゆえ、のことだったのではないかと思います。
そしてこうも言っていました。他人に常に見られていると、倫理観が保たれる、と。ルールがほとんどない中でも、それが大きな抑止力になる、というわけです。壁のないオフィスは、ピアプレッシャーももたらしてくれるということです。