タバコ部屋は
タバコを吸うためだけの部屋ではない

ソフトウェア「FaceTouch(フェイスタッチ)」。タッチパネルディスプレイに社員の顔写真を表示し、来訪者がアポイント相手の顔写真をタッチして呼び出す、受付システム

猪子 みんなが待っている場所を、とにかく合わせろ、と言っています。例えば、プリンタが置いてあるところに、飲み物の自動販売機を置いていますし、タイムカードも置いています。そこには、ソファもあるんです。プリンタも自動販売機もタイムカードも、ちょっと待ったり止まったりする場所。それをわざわざ集めています。

本田 社員同士が偶然のコラボレーションに出会えるチャンスを増やそうと、わざわざそういう場を作っているのですね。

猪子 タバコを吸うので、タバコ部屋を使いますが、タバコ部屋ってすごくいいんですよ。とにかくいい。どうしていいんだろうと考えてみたら、手持ちぶさたなんです。とはいえ、タバコを吸うという別の目的がある。なので、隣にいる人と、ついついしゃべってしまう。社内なら仕事の話をしてしまう。無理やり共通の話を引き出したりして。すると、それが自分の課題のヒントになったりして。しょうがなく話すんです。それがいいんです。

本田 だから、社内で待たないといけないものを集めたスペースを作った。

猪子 自分自身が一人で何かを考える瞬間って、ほぼないんです。対話によってしか考えないし、一緒に誰かと考える。もう10年間くらい、オフィス内で一人で考えたことなんてないですね。環境と集団がアイディアを生み出しているんです。自分も集団の一部として、考えやすい環境や集団が機能しやすいような取り組みをしています。

打ち合わせテーブルの上に何枚もの紙が敷かれている。メモした紙ははがして持っていく「メモデスク」

 そういえば、チームラボにはユニークなテーブルがありました。打ち合わせテーブルの上には大きな紙が何枚も敷かれているのです。そこに、打ち合わせ中の社員がせっせとメモをしている。ミーティングが終わったら、大きな紙ごとはがしていく。これは独自で開発した「メモデスク」。テーブルをみんなで書き込む紙のホワイトボードにしてしまおう、という発想です。

 職種名称は、経営陣の役員を除くと、部長も課長もいません。一人ひとりがスペシャリストとしての専門分野を持っていて、プログラマ・エンジニア、数学者、建築家、CGアニメーター、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、絵師、編集者などが集まっており、意見も自由に出せるといいます。こういうことを言ってはいけない、などということはない。社長がプロジェクトに入るときは、単なる一員として入るので、社長の意見がまったく採用されないこともあるそうです。


「あたらしい働き方」バックナンバー

第1回 あたらしい働き方がどんどん出てくる今、
なぜまだ昔の基準のまま会社を選ぶのか

第2回 あたらしい企業選びの基準
6つのクライテリアと17の必要なスキル

第3回 セルフマネジメントができる人には、こんなラッキーな会社はない
【企業インタビュー:パタゴニア編】

第4回 働きやすさとは、カルチャーが合うか、合わないか
【企業インタビュー:ザッポス編】

第5回 日数制限のない有給制度をつくってしまった会社があった
【企業インタビュー:エバーノート編】

第6回 イノベーションを生み出す力を身につけるための教室は、
フレキシブルで、空間にもこだわりがあった。
【スタンフォード大学d.school編】

第7回なぜあの会社には、働き方のルールがないのか?
【企業インタビュー:IDEO編】

第8回会社への文句を
社内ツイッターで堂々とつぶやいてOKの会社があった
【企業インタビュー:セールスフォース・ドットコム】

第9回 仕事と趣味の境界線を曖昧にする。
仕事が趣味になれば、いつでも楽しいはず
【企業インタビュー:インストラクタブルズ編】

第10回 チームの要望通りに
オフィスの形を変えてOKの会社があった
【企業インタビュー:ネットアップ編】

第11回 自分で仕事の時間を切り分けられるから
不満がないんです
【企業インタビュー:ホワイトストラタス編】

第12回 午後3時には仕事を終えて
帰ってもいい会社があった。
【企業インタビュー:スタートトゥデイ編】

第13回 サイコロで給料を決める
ユニークな会社があった
【企業インタビュー:カヤック編】


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本田直之『あたらしい働き方』

パタゴニア、ザッポス、エバーノート、IDEO、スタンフォード大学d.School、カヤック、スタートトゥデイ、チームラボ、Plan・do・ see、ワークスアプリケーションズなど日米約20社を取材して得た確信。いままさに世界で生まれつつある「古い価値観や常識に縛られないあたらしい働き方」は何なのかを、伝えていきます。

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本田直之(ほんだ・なおゆき)
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長兼CEO
シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネジメントのアドバイスを行う。東京、ハワイに拠点を構え、年の半分をハワイで生活するデュアルライフを送っている。

幸福度ランキングトップの北欧(デンマーク、スウェーデン、フィンランド)の人たちと幸福について語り合って著した近著『LESS IS MORE 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』(ダイヤモンド社)が話題になっている。
このほかの著書に、ベストセラーになったレバレッジシリーズをはじめ、『ノマドライフ』(朝日新聞出版)、25万部を越えるベストセラーとなった『面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則』『ゆるい生き方』『7つの制約にしばられない生き方』(以上、大和書房)『ハワイが教えてくれたこと。』(イースト・プレス)などがある。
著書は累計200万部を突破し、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。