それでも「あんなムチャなクルマ」を造ってしまう会社

 と、そんな激動のタイミングで出てきたのが、今回試乗するSuper-ONEである。

 軽EVをベースとした小さく軽い車体に、95馬力相当の強大なパワーを与え、足回りを強化する。速い。楽しい。エキサイティング。

 繰り返すがホンダはEVを巡る経営戦略で、「転身」と呼べるほどに急角度の軌道修正を迫られている。

 その一方で、「EVで何をしたらオモロイか」という根源的な問いに対して、かつて我々がイメージしていた、明るく元気でブッ飛んだ(もっと言うと、軽とワゴン「だけ」の会社ではない)いかにも「ホンダらしい」答えを出してきた。このギャップがなんともホンダではないか。

 先にお話しした某社エンジニアの言葉が改めて思い浮かぶ。

「そこがホンダさんですよ」

 彼は確かにそう言った。ライバル会社に所属する彼が、唸るように言ったのだ。

 そう。「そこがホンダ」だ。「あんなムチャなクルマ」と他社のエンジニアに言わしめてこそのホンダではないか。

 そのホンダは、Super-ONEで一体何をやったのか。じっくり見ていただこう。

試乗したホンダ「Super-ONE」今回試乗したホンダ「Super-ONE」 Photo by F.Y.

95馬力の正体~ベース車「N-ONE e:」とどこが同じでどこが違う?

 最高出力は70kW。馬力にすると95ps。最大トルクは162N・mである。

 この95psをどうやって手に入れたのか。Super-ONEというクルマの成り立ちを理解する上で、ここが重要なポイントになる。ベースであるホンダの軽自動車EV「N-ONE e:」の最高出力は47kW(64ps)。Super-ONEのパワーはN-ONE e:の実に1.5倍もある。

 なるほど大きく強いモーターを積んだのね、と思えばさにあらず。モーターはN-ONE e:と同じMCF7型。バッテリーパックも同じ82.7Ah、358Vだ。

 さらには電動駆動系の中核をなす「e-Axle」まで基本的に同じものを使っている。

専用のセミバケットシートを備える車内専用のセミバケットシートを備える車内 Photo by F.Y.