戦死した夫が遺した軍服の「第2ボタン」…何度も取れていた理由が切なすぎる〈風、薫る第110回〉何度もボタンが取れていたワケは、直美がボタンをつけてくれる姿が見たくて、わざと引きちぎっていたから 写真提供:NHK

第2ボタンの秘密

「ああ、会いたかったなあ」のあと、明に、なのかと思ったが、直美であった。

 やっぱり直美が一番大事なのだ。あんなにかわいい明に一度も会うことがなかった吾郎が、ほんとうに気の毒だ。

 多江は吾郎から託された第2ボタンを直美に渡す。

 ここで、吾郎のボタンがなぜとれていたか、その理由が明らかになる。直美が不器用にボタンをつけている姿を見るのが吾郎は好きで、それで何度も何度もひきちぎっていたのだ。

 りん(見上愛)が、明を見ているから、ボタンをつけてあげてと申し出る。

 吾郎とふたりの家に戻る。

 吾郎の好きなマッチに火をつけて、軍服の汚れをはらい、ボタンをつける。

 涙が止まらない。

 吾郎の愛唱歌「埴生の宿」の歌声が聞こえる。涙がこみあげる。「直美」とニコニコした吾郎が現れる。朝ドラには時々幽霊が出てくるが、これは幽霊というよりは幻?

 吾郎の軍服のボタンがまたとれる。「バカ」と直美。

 泣き笑い。明るいボタンつけ。

 吾郎は、直美が泣き暮らさないように、笑わせてくれたのだろう。

 ボタンをつけ終わった直美は、一ノ瀬家に戻る。「ただいま」と明を抱く。ちょっと上を見上げる赤ちゃん。背の高いお父さんの顔が彼には見えていたのかもしれない。

「おかえり」とりん
「ただいま」と直美。

 直美は悲しみを抱えながらも、前を向こうとしているということだろう。

 このエピソードは作者にとって相当自信作であろう。

 夫婦のたわいないやりとりというささやかな幸福が、戦争によって壊されてしまう悲しみ。視聴者としても、悲劇をエンタメとして消費することにいささかためらいもあるが、曖昧にぼかされたものよりもメリハリの利いた物語は見やすい。

 そのうえ、日清戦争では、戦闘以外にも伝染病や脚気によって多くの人が亡くなったという知識も得られた。