逆に「あるよね、こういうこと」と言った。それどころか、自分自身も「こいつ上司にばっかり」「手柄ばっかり取りやがって」と思うような人を随分見てきたという。

 この答えは、会社員には妙に納得できる。働いていれば、努力と評価がいつも一致するわけではないことくらい知っているからだ。仕事はそれほど公平にできていない。

研究が示した
「手柄を横取り」の代償

 ちなみに、こうした「手柄の横取り」は研究まである。2022年、チェンらは『そのアイデアは私のものだ!――上司による手柄の横取りが部下の仕事上の成果に及ぼす影響の実証的検証』という論文を心理学誌に発表した。

 中国の大手製造業、上海新時達電気で調査し、最終的に上司125人と部下418人を組み合わせた418組のデータを分析している。しかも1度だけのアンケートではなく、1カ月ずつ間を置いて3回に分けて調べた研究である。

 扱っているのは、他人の貢献を自分のものとして扱ったり、自分の役割を実際より大きく見せたりして、上の人間に自分をよく見せる行動だ。相談者の話とかなり近い。

 結果も分かりやすい。上司による手柄の横取りが強いほど、部下の怒りや不公平感が強く、それらを介して職場で意見を言う行動や仕事の成果が低いという関係が示された。

 研究では、上司が手柄を取ったのは「部下である自分を守るためだ」と部下が受け止めた場合には、怒りや不公平感との関係が弱まることも示されている。

 まあ、そうだろうと思う。自分が考えた企画を上司が社長の前で自分の案として説明し、それで上司だけが褒められた。そんなことが2回、3回と続けば、4回目も張り切って企画を出そうとはなかなか思えない。「また持っていかれる」と考える方が自然だ。

 こういう上司がいれば、部下を腹立たせるだけでなく、だんだん口をつぐんでいくのも無理はない。会社側も無傷では済まないだろう。

「僕がいない時、
態度変えるのかな」

 ただ、今回の豊田氏の話で私が引っかかったのは、その後だった。