「とにかく一回、
めちゃ働いてごらん」
「とにかく一回、めっちゃ働いてごらん。めっちゃ働いてみると、その上司の見えなかったところが見えるようになるかもしれないし」と言った。何より、仕事の力がつく。
「めっちゃ働いてごらん」という話は、社長時代、新入社員にもずっと話してきたことだという。
「3年間はとやかく言わずにとにかくやってごらん。3年できない人は3日やってみろ。3日もできない人は3時間やってみろ。3時間もめちゃくちゃ仕事できないなら3分やってみろ。3分もできないなら3秒やってみろ。3秒、絶対できるからね。3秒できたらその3秒を連続してやれば、3分になり、3時間になり、3日になり、3カ月になって3年になるよと」
ずいぶん古風な話である。今なら「手柄を奪う上司を放置する会社の方がおかしい」という反応も当然ある。実際、先ほどの研究を読めば、その批判には根拠がある。
研究では、上司による手柄の横取りが強いほど、部下の怒りや不公平感が強く、意見行動や仕事の成果が低いという関係が示されている。人事評価の仕組みを直す、上司を部下側からも評価するなど、会社が考えるべきことはある。
会社はときどき理不尽
社員はどうすればいいのか
でも、相談者は明日の朝も会社へ行く。上司が急に有能になるわけではない。社長が突然すべてを見抜いてくれるわけでもない。人事制度が来週から変わるわけでもない。その間、自分はどうするのか。豊田氏が答えようとしたのは、おそらくそちらだった。豊田氏は、「一人じゃないよ。人間、一人じゃないよ」と繰り返した。
さらに興味深いのは、「自分以外の誰かのために」やったことについて、豊田氏が「報われないんだよね」とあっさり認めたことだ。
こういう話なら「でも、いつか誰かが見ています」と続けたくなる。豊田氏はそこまでリップサービスしない。報われないことはある。それでも、今の大人が面倒なことを少しでも解決しておかなければ、次の若い人が困る。だからやる。そういう話だった。
冒頭の相談者は「役員と仲のいい人だけが得をして生き残るのか」と聞いた。最後まで聞いても、この疑問はきれいには消えない。実際、役員に取り入って得をする人はいるだろう。手柄を取る人もいる。そういう人が会社に長く残ることだってある。豊田氏自身、そういう人を随分見てきたと言っているのだから。
会社は、ときどき理不尽である。評価も間違う。上司もハズレの時がある。トップだって人を見る目を誤る時がある。そこで自分まで腐るのか、それとも目の前の仕事は自分の仕事としてやるのか。豊田氏の答えは、たぶんそこにある。嫌な上司のせいで、自分まで仕事を嫌いになる必要はない。
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