数字を聞き手に届かせる
トップリーダーの話し方
これを、平井氏のプレゼンに当てはめてみましょう。
まず「事件」。これが熊本地震という予期せぬ出来事です。
次に「葛藤」。これほど大きな影響を受けた年に、果たして目標を語ってもよいのか。工場の従業員も被災している。数字を掲げること自体に、ためらいが生じてもおかしくありません。
そこで示されるのが「解決」です。平井氏は、だからこそ中長期の視点を失わず、3000億円という数字を掲げます。困難な状況に引きずられるのではなく、未来への道筋を示すために数字を使いました。
そして最後に「教訓」。逆境の中にあっても、目標が示されていれば、人は同じ方向を見ることができます。このとき、数字はノルマや管理のためのものではなく、「どこを目指すのか」を互いに確認するための道標となったのです。
もし、ここで数字だけを提示していたらどうでしょうか。
『一目置かれるリーダーの戦略的話し方 アナウンサーが教える言葉を相手に届ける技術』(阿部 恵、三笠書房)
「営業利益3000億円」という事実は伝わっても、なぜ今その数字が必要なのかまでは共有されなかったでしょう。
一目置かれるリーダーは、数字を語るとき「この数字は、どんな状況の中で語るのか」「この数字を聞いたとき、聞き手は何を思い浮かべるか」まで考えます。
業績が順調な年に語る数字と、困難や逆風の中で語る数字とでは、同じ数値でも、聞き手に届く重さはまったく異なります。
また、同じ数字でも、ある人から語られると冷たく響き、別の人から語られると、組織を動かすほどの力を持つということもあるでしょう。
数字はもともと無機質なものですが、その数字に至る状況や思考など「文脈」を添えて語ることで、「意志」にも「物語」にもなるのです。







