孤独死の問題は
発見が遅れること

 そもそも、結婚すれば孤独死を避けられる、という前提は怪しい。結婚しても、配偶者は先に死ぬかもしれない。離婚するかもしれない。

 日本人の平均寿命は、男性が約81歳、女性が約87歳だ。6歳の差がある。しかも、夫が妻より年上であることが多い。平均婚姻年齢は、初婚の場合、夫が約31歳、妻が約29歳だ。つまり、平均的な夫婦では、夫が8年ほど先に死ぬ計算になる。妻は10年近く一人で暮らすことになる可能性が高い。結婚しても、最後は一人になる。

 離婚の可能性もある。日本の離婚件数は年間約18万件。婚姻件数の約4割に相当する。離婚すれば、また一人に戻る。子どもがいても、一緒に暮らすとは限らない。

 警察庁の統計によれば、2024年に孤独死した65歳以上の高齢者のうち、死亡推定日から発見までの日数が「当日から1日」だったのは約4割だ。「1カ月以上」だったのは約8%にあたる約4500人。発見が遅れるケースは、実際にはそれほど多くない。

 発見が遅れる問題を解決するのに、結婚や「人とのつながり」に頼る必要はない。国レベルの制度で対応すべきだ。たとえば、電気・ガス・水道の使用状況を自動でモニタリングし、異常があれば行政が確認に行く仕組み。郵便物が溜まっていたら通報される仕組み。そういった制度的なセーフティネットがあれば、個人が「人とのつながり」を維持する努力を強いられる必要はない。

 2024年に施行された孤独・孤立対策推進法は、孤独や孤立を「社会全体の課題」と位置づけている。しかし、その対策の方向性が「人とのつながりを促進する」に偏っているのは気になる。つながりたくない人もいる。一人でいたい人もいる。そういう人たちの選択を尊重しつつ、発見が遅れる問題だけを制度的に解決する。それが本来あるべき姿だろう。

 結婚を孤独死対策として勧めるのは、問題の本質を見誤っている。孤独は悪ではない。発見が遅れることだけが問題なのだ。そして、それは個人の人間関係ではなく、社会制度で解決すべき問題だ。