日本から世界へと歩んだ新氏と世界から日本へと歩んだ渋澤氏。自身のビジネスマンとしての経験を活かし次世代のグローバルリーダーの育成に邁進する新氏と、投資という視点から希望溢れる次世代の構築を見据える渋澤氏にとって真のグローバル化とは。そして企業が社会に対して果たすべきCSRの意味と意義について語り合います。

世界に誇れる日本人の感性

渋澤健(しぶさわ・けん)
コモンズ投信株式会社取締役会長。公益財団法人日本国際交流センター理事長。
小学2年で渡米、1983年テキサス大学化学工学部卒業。1987年UCLA大学にてMBAを取得。米系投資銀行で外債、国債、為替、株式マーケット業務に携わり、1996年に米大手ヘッジファンドに入社。帰国後2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。2008年コモンズ投信株式会社を創業。2012年公益財団法人日本国際交流センターの理事長に就任。渋沢栄一記念財団理事、経済同友会幹事、日本医療政策機構理事など複数の職務に従事する。著書に『金融のプロに騙されるな』(朝日新聞出版)、『30歳からはじめるお金の育て方入門』(同文館出版)、『渋沢栄一 明日を生きる100の言葉』(日本経済新聞出版社)などがある。

渋澤健(以下、渋澤) グローバル化が求められているなかで、改めて日本人の良さとして世界に訴えられるものは何かと聞かれたら、私は感性だと答えますね。日本の食べ物って実においしいですよね。和食に限らずイタリアンで中華でもおいしい店がたくさんあります。

 非常に競争原理の厳しい飲食業界において、生き残るためにはかなり高い感性を持ち合わせていないと無理で、異なる分野のAとBを足してこうするとおいしいものができるというクリエイティビティが優れている必要があると思うんですよね。

 たとえばカレーうどんなんてその最たるものでしょう。冷静に考えるとあれは異文化の混ざったすごい食べ物ですよ。日本人は画一的な社会で生きているから、異文化をあまりにも自然に受け入れることができるんです。その感性を今まですばらしい能力だと捉えたことがなかっただけじゃないでしょうか。

新将命(以下、新) なるほどね。

渋澤 海外の文化を吸収することも早いですし、韓国や中国など同じアジア圏の人たちと比べても日系アメリカ人はすぐにアメリカ人化しちゃう傾向があると感じます。

 思いやりがあるというのか、自分の意見をゴリ押しするだけじゃなく、相手の立場に立って考えられるというのも日本人の優れた感性です。だから日本人としての誇りを持って堂々としていればいいんですけどね。

渋澤 真のグローバル企業、グローバル人材になるのはすばらしいけれど、グローバルって無国籍ということではないと思うんですよ。海外にいると毎日のように他民族の方に日本人や日本について説明を求められます。そういう意味で海外にいるほうがよっぽど日本を意識させられる。逆に外にいるほうが日本の改善すべき点や誇りに思う点、良い点や悪い点が見えてきます。グローバルになるというのは日本を捨てることではなく、もっと自国を知ろうということだと思いますね。