日本人が得意な長期戦略

渋澤 コモンズ投信は個人投資家の皆さんに長期的な資産運用で、未来の安心を築いていただくことを目的としています。

 2000年に長男が生まれのですが、この小さな赤ん坊がいつか大人になって、いままでの枠組みを超えてチャレンジする日が来ると、そのとき思いました。留学したいとか、あるいは起業したいとか何かをやりたいと言ったときに美田を残すということではないのですが、応援する資金をつくりたいと思ったのがきっかけです。「お前が赤ん坊のときから、毎月積み立てたお金なんだよ」と手渡すことで、親の世代から子の世代へ、世代を超えるメッセージを託せるかなと考えました。

 トレーダーの世界には「長期計画とは15分、短期計画とは15秒」というアメリカンジョークがあるように、市場では1秒に何万という株が動いているのに、渋澤さんのコモンズ投信は30年というスパンで考えていらっしゃいますよね。トレーダーから見れば驚くほど長い時間です。

渋澤 20〜30代の自分の経歴を振り返ると長期投資とは無縁だったのですが、40代になり、人生の後半に入ったら、自分がこの世の中に何を残せるかという意識が芽生えるようになりました。また、長期という考え方が未来への希望を育むだけでなく、長期的な投資が企業の価値創造を応援することにもつながると今は考えています。

 毎期の収益の最大化というと欧米には劣るかもしれませんが、日本の企業はこの事業を次の世代まで残していきたいという長期的な理念は非常に強く、だからこそ日本に長寿企業が多いのかなと感じています。

 日本には創業から200年以上経った企業が3500社あると言われていて、それは世界でも類を見ない数です。残るということは、何かしら正しいことをやっている証でしょう。それがCSRですよ。

 ただ、私はどうもこのCSRという言葉が不満でね。CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略ですが、「Social」ではなく「Stakeholder」に変えるべきじゃないかと思っているんですよ。ステークホルダーなら顧客も社員も株主も、すべてをカバーできます。ステークホルダーに対してCSRを愚直にやっている会社が長生きするんじゃないかと思うんですよね。