
「どうしてお母さんと別れたんですか?」
この13、14年、環は一度も父や生家のことを思い出すことなく(忘れられていると思っていたようだが)、母はなぜひとりなのか考えたこともなかった。
3歳だから記憶がないのも無理はない。ドラマを見ていると、環はとてもおとなしく、主張がなかったから、そういうものなのかなとも納得する。とはいえ、だ。
周囲と比べて、なぜうちにはお父さんがいないの?と疑問に思うことは一度もなかったのか。美津(水野美紀)や直美やシマケン(佐野晶哉)がいて何不自由なかったということだろう。
もし環がいまの暮らしに強い不満を感じていたら、「なんでうちは他所と違う?」と疑問を持つこともあったかもしれない。環はそれなりに満たされていたから気にならなかったのだと解釈できる。
例えば、筆者は幼稚園からずっと父母と離れ祖父母の家に居候していた。それがヘンだと思わず、むしろそのほうが快適と思って生きてきた。だからちょっと変わってると言われる一ノ瀬家のことがまったくおかしいと思わない。
動き始めた環。亀吉とふたりきりで会うことになる。チュウ(若林時英)の店で、亀吉にとってはじめての蒸麺包。「好きなだけ食え」と大量に注文するのは、お父さんだなあと思う。
環は父にド直球で聞く。
「どうしてお母さんと別れたんですか?」
亀吉はためらうことなく答える。
「あいつがおめえを女学校にいれるって聞かねえもんだから、俺もう反対しちまってよ。で、大変なことに」
ただし結果はぼかした。視聴者は忘れていない。酔っ払って暴れて、家から火を出したことを。環はきっと火事のことも覚えていないのだろう。目の前の亀吉は極めて穏やかだ。いい人に見える。
「それで、おめえは?女学校は楽しいんかい?」
環の話を聞く姿勢を見せる亀吉。環が悩んでいるようだと悟ると背中を押す。
「お前の母ちゃんは自分勝手な女だ。気にすんな。母さん、見習ってわがままに生きろ」
人生に迷ったとき、正解を探すよりも、自分がどうしたいのかを考えることのほうが大切なのかもしれない。
父親風を吹かしてああしろこうしろ、あれはダメこれはダメといっさい言わず、なんでもやっていいと肯定し、もし結婚をしたくなったら嫁ぎ先を探してくれると言う。じつにいいお父さんじゃないか!







