人生に迷ったとき、「正解」を探すより大切なこと〈風、薫る第118回〉

三浦貴大の魅力

 勇気をもらったのか、環はシマケンの元へ――。置き手紙に描かれた昔のロン毛のシマケンの似顔絵が今日のポイント。

 再登場の亀吉を演じている三浦貴大。朝ドラ名物・ダメな夫の役割を担わされていたが、ここへ来て、またかき回すのかと思ったら、むしろ、環にいい影響をもたらした。

 振り返ってみれば、酒に溺れる以外は働き者で悪くない人物ではあったのだ。ただ、酒を飲むと気が大きくなって暴れてしまう。それと、昔ながらの価値観を持っていて、女性は結婚したら家庭を守るべきで、女学校に行く必要はないと、環を女学校に行かせたいというりんに猛反対していた。

 酒と女性観。この2点が夫婦の溝を深め、やがて離婚に至る大きな原因となったのだろう。

 ただ、亀吉は単純な悪役としては描かれていない。

 三浦貴大が演じることで、悪い人ではないが、ちょっとしたことでトラブルを起こしてしまうという、人間らしさが滲んだ。

 貞は大往生だったと語る亀吉。母との関係も良好だったし、りんと別れたあと、仕事はちゃんとやりながら、十数年を過ごしたのだろう。

 三浦貴大は映画『国宝』のイメージも手伝って、亀吉を朝ドラによくいる主人公に敵対する側に決してしなかった。

 評判のよかった『国宝』では、歌舞伎の世界のなかで演者側ではなく興行側で、選ばれし者では決してなく、歌舞伎役者という特別な存在を引いた視線で見ている役割を担った。それが観客の視線にもつながって物語に親しみを感じさせもした。

 最初は俳優たちに冷めた態度を見せていたが、終盤、そうでもなく、認めるべきものは認める姿を見せてますます好感度が上がった役だ。

 今回の亀吉もそういう役割だ。生きる環境の違いで考え方は違うが、わかりあえることもあるという希望をもたらす。

 三浦貴大が演じる役について、ついこの間まで放送していた『勿忘草の咲く町で 〜安曇野診療記〜』(NHK)も興味深い。現代の安曇野の病院を舞台にした医療もので、看護の黎明期を描いた『風、薫る』とも親和性がある物語だ。

 そこで三浦が演じたのは、誤嚥性肺炎で入院した祖父の延命に胃瘻を行うかどうか担当医と議論になる孫。祖父の延命にできることはしたい。でも、医療のことには詳しくない。仕事が忙しくてじっくり考える余裕がない。最初はなんだかぶっきらぼうな感じだったが、医者と話しているうちに変化していく。

 祖父思いの誠実な人物なのがわかる。

 三浦貴大は、三浦友和、山口百恵と大スターを父母に持ちながら、その肩書が不要なくらい、堅実ないい芝居をする俳優として活躍している。もしかしたら父母への圧倒的好感度が多少、プラスに働いているかもしれないが。その幸運を含めて、たのもしい存在である。

『勿忘草の咲く町で』は病院と患者とその家族が、生と死にじっくり向き合う物語で、『風、薫る』の時の補助線にもなるドラマであったように思う。おすすめしたいドラマだ。

人生に迷ったとき、「正解」を探すより大切なこと〈風、薫る第118回〉