ひとつはちいかわのような強力なIPを活用したキャンペーンは、大手飲食チェーンの集客戦略にとって無視できないほどの重要性を持ってきたということです。

 実際の数字はくら寿司の企業秘密ということになるのでしょうが、仮に「ちいかわコラボの集客効果のほうが、全店10%割引の集客効果をはるかに上回る」という結果が出たのだとすれば、今後も飲食大手は集客にあたって強力なIPとのコラボ企画に頼らざるを得ないということになります。

 その一方でもうひとつの問題として、この手のコラボ企画は炎上しがちだという問題があります。これまでも他の飲食チェーンではポケモンやワンピースのトレーディングカードなどで転売ヤーが行列を作り、お店の周辺には景品を抜き取ったあとの食べ物が大量に捨てられるといった事件も起きました。

 それに加えて今回の内部犯行が疑われる事態です。似た内部の問題としては、5年前に社会問題になったバイトテロの事件がありました。コンビニの店員が冷蔵庫に寝そべった写真をSNSに投稿したり、牛丼店の従業員が食材をおもちゃにした様子を投稿したりして、企業ブランドに大きなダメージを与えました。

 今回の横領事象は、そういったバイトテロとは異なる犯罪行為ですが、背景としては従業員の雇用主に対するロイヤリティ(忠誠度)が長期継続的に低下しているという実態があります。現場が人手不足に陥る業界では当然、確率的にそのような問題が増加します。

 それと掛け算の形で、コラボグッズの経済価値が劇的に上昇したことが問題を大きくしました。換金すれば高く売れるものが職場で目に付く場所に置かれていれば、犯罪の誘因は当然増えます。

 これは、実は企業経営の問題としてはコンプライアンスの本質的な問題です。日本人はコンプライアンスを法令順守のルールのように狭くとらえているケースが見受けられますが、本質的には法令違反をいかに起こさないようにするかの対策のほうが重要です。

 金目のものが事務所に置かれていて、それを従業員が盗まないようにする。この経営としては基本レベルの問題だったものが、金目のものの金銭価値が上がったうえに、従業員の忠誠度が下がってしまえば、当然問題としての難易度はあがります。