トヨタ自動車の近健太社長ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏 Photo:JIJI

1990年代初頭、ユニクロは全国展開へ踏み出そうとしていた。ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏が、その前に経営観を大きく揺さぶられたのが、35歳の時に出会った米ITT元CEOハロルド・ジェニーンの経営書だった。20代には「ちっとも成長しなかった」という柳井氏は、何を学び、仕事のやり方を変えたのか。「全人生で一番学んだ本」から読み解く。(イトモス研究所所長 小倉健一)

一生懸命に働いても
「ちっとも成長できなかった」

 柳井正は2022年3月、日経トップリーダーの取材で、20代の自分について「毎日、一生懸命に仕事をやっていたけれど、ちっとも成長しなかった」と語っている。

 家業の小郡商事に入り、店頭にも立った。仕事を休んでいたわけではない。目の前の用事を片づけ、起きた問題に対処し、忙しい日々を送っていた。

 後に柳井が「甘かった」と振り返ったのは、その頃の働き方だ。同じ取材で転機に挙げたのが、1985年の35歳の時に読んだ『プロフェッショナルマネジャー』(英語原著『Managing』)だった。

 著者のハロルド・ジェニーンは、米国の通信機器会社ITTを約250の事業部門を抱える巨大企業へ育てた経営者である。柳井はこの本を「最高の教科書」と呼び、「全人生で一番学んだ本」に挙げた。

柳井正の仕事の仕方を
180度変えた言葉

 柳井は2010年冬にプレジデント・オンラインに寄せた解説「プロマネ・ノートはこう読んでほしい!」で、「僕が今までやってきた経営は違う」「僕の経営は甘い」「経営するとはこれだ」と思わざるをえなかったと書いている。衝撃を受けただけでは終わらなかった。

 本書に感銘を受けた柳井は、1991年に小郡商事をファーストリテイリングという社名に変更し、29店だったユニクロを毎年30店ずつ出店し、3年後に100店を超えて株式を公開するという目標を掲げた。

 1994年、柳井の宣言通りにユニクロは100店を超え、広島証券取引所に上場した。29店の会社が100店を運営するには、昨日までのやり方を続けるだけでは足りない。

 では、『プロフェッショナルマネジャー』で柳井が「180度変わった」と述懐するほど衝撃を与えた言葉とは、何だったのか。