第三に、株価である。米金利上昇は世界株式のバリュエーションを圧縮しやすい。特にPERの高いグロース株や、借り入れ依存度の高い企業には逆風となる。米株安が先行すれば、日本株も半導体やハイテク、景気敏感株を中心に調整圧力が強まる。特にAIブームによって関連銘柄は日米で大きく水準を切り上げており、その反動には警戒が必要である。
したがって、米債市場が秩序を失う場合には、日本では債券安・円安・株安のトリプル安といった展開も想定しうる。
米国動向で留意すべきことは?
今後の日本市場をみるうえで、米国の動向において第一に注目すべきはインフレ動向である。中東情勢の長期化によるエネルギー高などで、米インフレが再び加速する可能性は十分ある。その場合、FRBは大幅な利上げを余儀なくされ、米長期金利が上昇しやすい。
第二に、米財政悪化への警戒である。景気減速局面でも大型減税や歳出拡大が優先される、あるいは政治対立で財政再建の道筋が見えない、といったケースでは、国債増発懸念から超長期債中心に売り圧力が強まるだろう。
第三に、中間選挙をにらんだ政治動向である。支持率低下が進めば、円安是正や対米投資の拡大などを一段と要求してくる可能性がある。米国内政治の地合いが悪化するほど、トランプ政権による日本への圧力は強まりやすいという視点は持っておくべきだろう。
ベッセント圧力の真意は、日本を変えたいというより、米国の金利上昇への影響を避けたいというものである。だからこそ日本市場は、発言の表面だけでなく、その背後にある米国の物価、財政、政治という三つの火種を見なければならない。ベッセント氏の言葉が本当に映しているのは、日本の弱点であると同時に、米国の焦りでもある。
(伊藤忠総研マクロ経済センター長兼主席研究員 武内浩二)







