東北の猟師が常時携帯する「マタギナガサ」と呼ばれる狩猟刀は、刃渡りが8~9寸(約24~28cm)ほどもある大きな山刀です。マタギナガサであれば、クマの心臓や太い動脈に達しうるでしょうが、通常の刃渡りの短いナイフでクマに反撃することは、一般の人にできる技ではありません。

 鉈であれば、クマの鼻先にたたきつけることで反撃できた事例もありますが、どんな状況でも効果があるかどうかは定かではありません。

クマ撃退スプレーも
万能ではない

 クマ撃退スプレーについては、すでに世界のクマの生息地で実際に使用され、効果が実証されています。日本でも国産品が販売されるようになってきており、品薄状態が改善されつつあるようです。しかし、中には能力や機能に不安がある製品もみられます。クマ撃退スプレーを選ぶときには品質をよく確かめるとよいでしょう。

 クマ撃退スプレーは、事前に噴射練習を行ない、すぐに取り出せる場所にホルスター(収納ケース)で携帯できていれば、鉈などよりも信頼できる防御製品です。また、購入後は、ノズルに不具合がないか確かめるため、1秒程度の試験噴射をおすすめします。

 ただし、何かの理由で本当に猛り狂ってパニックになったクマは、クマ撃退スプレーの噴霧を受けても意に介さないかもしれません。たとえば、街中でパニックになったり、鉈やナイフによる反撃や銃撃によってキズを負い、極度に興奮したクマに使用したところで効果の保証はないかもしれません。

棒やストックで距離を保って
抵抗する方法もある

 東北でキノコ採りをしていた最中に母グマに襲われた男性は、杖でクマをたたいて反撃し、生還しました。また、2016年の秋田県鹿角市十和田地区での連続死亡事故でも、生還者はいずれも先をとがらせた竹の棒などでクマの接近を防ぎながら生還しています。クマからの攻撃を受けてしまったときは、こうした武器で抵抗することも一つの方法だといえるでしょう。

 登山に使うピッケルやストックの先端には、通常は金属性の石突が付いています。クマを迎えうつときは、硬い先端でクマの顔を突くような動きになるでしょう。キノコ採りの最中にクマに襲われた男性はその経験を活かし、さすまたのような金属製の先端を備えたクマ撃退用のスティックを開発して販売しているそうです。