「着地」で体勢を崩すことも
リニア試乗で分かった意外な弱点

 試乗前から気になっていたのは減速時の「着地」だ。前回記事で筆者は「唯一、気になったのは減速時、再び車輪走行に移行する時の揺れだ。といっても飛行機の着陸時のような衝撃があるわけではなく、車輪走行に移行した直後、ガクガクッとした前後動が発生する」と記した。これは改善したのか。

 JR東海も課題を認識し、改善に力を入れていたようだ。車内では担当者から「車両が前後動しないように、着地した直後2、3秒ぐらい電流を一定にする制御」を開発したとの説明があり、確かに着地前後の前後動は改善したように思える。

 しかし、着地直後の強い減速感は依然として残っており、鉄輪式新幹線のつもりで乗るとかなり違和感がある。旅客機の着陸は接地してワンテンポ置いてから逆噴射で減速するが、リニアの場合は接地と減速が同時にやってくる。

 旅客機は着座でシートベルトを締めるのに対し、鉄道に制約はない。もちろん衝撃や減速度は旅客機とは比較にならないほど小さいが、試しに座席で腰を浮かせたまま着地を迎えると、体勢を崩されてしまった。交通弱者だと、はずみで転ぶ可能性もないとは言えない。

 試乗後、課題の認識と改善の可能性について担当者に聞いたが、物理的な限界もあるようだ。今後も引き続き、乗り心地向上に取り組む一方で、「着地」に備えるようアナウンスや照明で注意喚起を行うなど、これまでとは異なるアプローチの必要性も示唆された。

 安全には万全を期してもらいたいが、今の新幹線と「異なる」乗り物になってしまうことは、必ずしもネガティブに捉える必要はない。

 営業仕様を念頭においた「M10」は、品川~名古屋間40分という短時間乗車を前提に、座席をあらかじめ一定角度に寝かせることでリクライニング機能を廃止し、全自動で方向転換可能な割り切った設計とした。新幹線に似ているが新幹線ほど自由にくつろげる場所ではない。もはや違う性質の乗り物なのである。

 タイヤ走行と浮上走行の切り替えはリニアの弱点であり個性でもある。ヘビーユーザーのビジネスマンには日常風景になるだろうが、乗り慣れていない人にとって「離陸」「着地」はリニアだけの特別な体験になる。危ないから座らせるという制約ではなく、タイヤの音がふっと消える感覚、減速とともに地面に戻ってくる感覚、こうした体験に意味を持たせるような工夫も必要になるのではないか。

 これまでJR東海はリニア中央新幹線の「新幹線らしさ」をアピールしてきたが、そろそろ利用形態を含めた「リニアらしさ」を醸成する時期に入ってきたのかもしれない。そんなことを感じさせる2度目の試乗会だった。