リニアの浮上と走行は全て、超電導磁石と線路(ガイドウェイ)の両脇に設置されたコイルの作用によって行われる。

 列車を浮上させるのは、ガイドウェイの車両側に設置された浮上コイルだ。浮力や左右位置の調整は全て、車両の超電導磁石との電磁誘導反応で生じる。外部からの電力供給や制御を必要としない、物理現象で成り立っている安定したシステムだ。

 ただ、浮上させるための磁力は速度とともに強まるため、停止状態から概ね時速150キロ程度までは、台車下部と横から車輪(ゴムタイヤ)を出して車体を支持する。車輪を出して加速し、一定速度になったら浮上走行、停車前は再びタイヤを出す。まるで地上を走る航空機だ。

 列車の加速、減速はガイドウェイ外側の推進コイルで制御する。沿線の変電所からコイルひとつひとつに電力を供給し、超電導磁石との吸引・反発力を制御して車両を動かしていく。運転士は乗務しない地上主体の自動運転システムである。

リニアと東海道新幹線の
加速力の決定的な違い

 仕組みをふまえて試乗記に移ろう。試運転列車は山梨リニア線内の約30キロを全力走行した。乗車時の記録を見返すと、発車から1分強で時速150キロを超え浮上走行に移り、約2分で時速300キロに。停止状態から3分後には最高速度の時速500キロに到達した。

 平均加速度で示すと時速2.78キロ毎秒、通勤電車以上の加速度である。なお、東海道新幹線「N700S」の起動加速度は時速2.6キロ毎秒であり、大差ないように見えるが、これは中速域までの性能である。レールと車輪の摩擦力で走行する従来の鉄道は速度が上がるほど加速度が落ちるため、時速300キロへの加速に同じく3分程度を要する。

 ところが、リニアは車上の超電導磁石と地上のコイルの間に発生する磁力が直接、車両に力を加えるため、どの速度域でも加速力が変わらない。先ほどの乗車記録を見ても、時速200キロから300キロが33秒、300キロから400キロが33秒、400キロから500キロが36秒となっており、時速500キロまで一定の加速度で駆け上がる。

 時速500キロ到達までの走行距離は約12キロだったが、速度試験ではわずか8.8キロで時速581キロを出したこともある。乗り心地や経済性を度外視すれば、さらに加速度を上げられるようだ。