帝国データバンクの2025年「初任給に関する企業の動向アンケート」では、前年に初任給を上げたため、2025年度は既存社員の賃上げに回して新卒との差をつける、と答えた企業があった。新卒と給料が逆転しないよう、すでに働く若手の給料を上げるという回答もある。
大和ハウス工業は2025年4月、大卒初任給を25万円から35万円へ、40%引き上げた。同時に、約1万6000人の正社員の給与水準も平均23.5%上げた。しかし、大卒初任給の引き上げ率は、正社員の給与の平均引き上げ率を16.5ポイント上回る。
部下や後輩との
給料の差が縮まると…
自分にはどんな働きが求められ、それを果たせばいくら受け取れるのか。社員が知りたいのは、そこだ。新人向けの金額を大きく打ち出す会社ほど、今いる社員の給料についても、具体的に話す必要がある。
後輩との給料の差は、教える気持ちにも関わる。パーソル総合研究所の2025年「賃上げと就業意識に関する定量調査」は、正社員が300人を超える会社で働く20~64歳の正社員2500人に尋ねた。
このうち、2023年以降の会社の給与制度の見直しなどで、自分の給料が上がった人に注目する。部下や後輩との給料の差が縮まったと感じた208人のうち38%が、以前より部下や後輩を育てる意欲が下がったと答えた。自分も賃上げされた人たちの回答なのだ。
給料が増えれば、それで満足するとは限らない。周りと比べて、自分の仕事がどう扱われているかも気になる。その違いは、実際の働き方を変えるのだろうか。
同じ仕事なのに給料差、
働く意欲に与える影響は?
経済学者エミリー・ブレザらの研究『賃金格差が働く意欲に与える影響』(題名は筆者訳、2015年公開稿)は、この違いを調べた。インドで約1カ月にわたって行った実験では、男性労働者378人が3人ずつのチームに分かれ、縄やほうきなどを作った。
3人は並んで座り、同じ製品をそれぞれ作った。完成させた数は1人ずつ数える。研究者は最初に練習期間を設け、誰がどれだけ作れるかを測った。この生産量をもとに、3人の仕事の出来に順位をつけた。
研究者はチームを無作為に分け、全員同じ日給にする組と、練習中に多く作れた人ほど高い日給にする組を作った。差をつける組では、隣の順位との開きは5%未満だった。
どちらの組も、日給を決めた後は実験が終わるまで金額を固定した。給料に差がある組でも、その後に多く作ったからといって日給は増えない。「頑張れば昇給する」という仕組みは、ない。
説明のため、仮の金額で考えてみよう。自分の日給は1万円で、隣の2人も1万円をもらう職場がある。別の職場では、自分は同じ1万円なのに、隣の2人は、約1万500円と約1万1000円をもらっている。
自分が受け取る額は同じでも、周りの給料が違えば、働き方は変わるのか。研究者が知りたかったのは、この点である。







