日本専用車では、海外への横展開が望めない

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):普通なら日本法人の社長が「やめた方がいい」と言えば、本社も少しは考え直しそうなものじゃないですか。しかも反対の理由は、至極もっともなことばかり。他の地域への横展開も期待できない日本専用車をわざわざ造って、スズキ、ダイハツ、ホンダと軽の大ベテラン勢とガチで張り合おうなんて……普通に考えたら「そこまでしてやる?」という話ですよね。中国本社は早い段階から日本の軽自動車を研究していたわけですか。

BYD Auto Japan 代表取締役社長 東福寺厚樹さん(以下、東):はい。私がBYD Auto Japanに入ったのが2021年8月なんですが、その時点で既に軽自動車の研究は始めていました。日本の軽市場でどんなクルマが売れていて、どのくらいの市場規模なのか、どういう要件が求められるのか。そうしたリサーチはもうしていたんです。

ただそれはあくまでも「リサーチ」で、本当にやるかやらないかは全然決めていなくて、私も入ってすぐに「BYDとして軽自動車をやるっていうのはどう思う?」と聞かれたんです。

BYD Auto Japan 代表取締役社長 東福寺厚樹さん Photo by AD TakahashiBYD Auto Japan 代表取締役社長 東福寺厚樹さん Photo by AD Takahashi

F:そこで東福寺さんは「いや、やめておいた方がいいよ」と答えた。中国本社としては、日本の自動車市場をよく知る人を社長に迎えたわけだけれども、その人の最初のアドバイスが「軽はやめろ」だった。

東:そうなんです。やっぱり競争は激しいし、日本専用車になってしまうじゃないですか。これから販売網を作って、これから売っていこうというところに軽自動車を入れたって、いきなりワッと売れるものではない。ゼロから始めるのは非常に厳しいだろうと思ったんです。