王総裁が、日産サクラのハンドルを握った日

 軽参入の構想を一気に現実へと近づけたのは、他ならぬ日産のサクラだった。

日産の軽EV「サクラ」(広報写真)日産の軽EV「サクラ」(広報写真) 拡大画像表示

 当時、BYD Auto Japanの社員の一人が個人的にサクラを所有していた。東福寺さんは王総裁の来日に合わせ、その社員に「洗車して乗ってきてくれ」と頼み、実車を用意したという。

F:王総裁ご自身がサクラに乗ったんですか。

東:実際に乗られました。本人が運転して、「お、こんななんだ」と言いながら、すごく楽しそうにぐるぐる走り回っていました。そこで構想が確信に変わったんじゃないですかね。その日の夜に、王総裁と取締役のメンバーで集まって、ワッと打ち合わせをしたんです。でも私はそこには入っていません。中国側の幹部だけで。

日本法人の社長抜きで開かれた、中国トップ会議

F:なんと! 日本で会議をしたのに日本法人の社長ヌキで。その日は中国人幹部だけで「軽をやろう」という話がどんどん進んでいったんでしょうね。東福寺さんは反対派だから、「あいつを入れるとダメと言うから」と外されたのかもしれませんね(笑)。

東:そうかもしれません(笑)。昼には当時オープンしていたBYDのショールームにも寄ったんですが、王総裁が販売店の人たちに「日本で我が社の軽自動車があったらどうですか?」と聞くと、みんな口を揃えて「いや、あったら間違いなく売れますよ」とか言うんです(苦笑)。

F:販売店は新商品が欲しいから、そりゃそう言いますよね(笑)。東福寺さんからすれば、「お前ら簡単に言うけど、本当に売るんだろうな」という話ですよね。

東:そうです。本当にそうなんです。「軽く言ってくれるけど、本当に売るんだろうな?」と思いながら聞いていましたけど。「販売の現場でも売れると言っている」と話が一気に進んでしまって(苦笑)。